研究課題
超高齢化社会に突入する日本社会において健康寿命を保つことが国民のQOL、および医療経済を維持する上で喫緊の課題である。ADLを著しく低下させる運動器疾患の中で変形性関節症(OA)は要支援の状態になる第一の原因疾患である。過剰な力学的ストレスがOAを発症させることは古くから知られていたがそのメカニズムは解明されていなかった。申請者はこの課題に取り組むべく、細胞伸展負荷装置や独自に作成した3次元周期的静水圧負荷装置などを駆使してマウス初代軟骨細胞や関節軟骨器官培養に過剰な力学的負荷を与え、網羅的遺伝子発現解析から関節軟骨に対して破壊的に作用する分泌蛋白GREM1を同定した。我々の実験においてマウス初代軟骨細胞にrecombinant human GREM1 (rhGREM1)を投与すると、軟骨基質分解酵素の発現が上昇し、軟骨同化作用のある遺伝子の発現が減少することが発見された。さらに、in vivo, in vitroの実験からGREM1 がVEGFR2-NFκB シグナルを介して関節軟骨に破壊的に、またBMPシグナルを抑制して軟骨同化作用を同時に抑制してOAの進行を促すことが証明された。そして、力学的ストレス応答因子であるRac1を介してNFkBシグナルが活性化されGREM1が誘導される上流シグナルも解明され、GREM1が過剰な力学的負荷によってOAを発症する機序において重要な役割を果たしていることが証明された。本研究ではGREM1を標的とした新規治療法の実用化に向けてヒト手術、マウスサンプルを用いた阻害剤、低分子化合物、抗体の検索などを加速度的に進めることを目的としている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Nature Communications
巻: 10(1) ページ: 1442
10.1038/s41467-019-09491-5