研究課題/領域番号 |
17K16676
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小田邉 浩二 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (70737288)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 滑膜幹細胞 / 関節リウマチ / 変形性膝関節症 |
研究実績の概要 |
滑膜幹細胞は高い軟骨分化能を示し、これを用いた軟骨・半月板の再生医療を目的とした医師主導治験、臨床研究が計画・実施されている。現在のところ滑膜幹細胞を用いた治験・臨床研究は軟骨損傷や半月板損傷、および変形性膝関節症を対象としてきたが、関節リウマチなど炎症性疾患に対する適応の拡大も期待されている。本研究は関節リウマチの病態と関連した滑膜幹細胞の性質を明らかにすることを目的としている。関節リウマチ由来の滑膜幹細胞について、変性性膝関節症由来の滑膜幹細胞と比較し、増殖能・分化能・表面抗原プロファイルの評価を行った。結果、関節リウマチ由来滑膜幹細胞は変形性膝関節症由来滑膜とほぼ同等の増殖能を有し、コロニー形成能、分化能、表面抗原発現パターンも類似していた。成果は査読付きの国際雑誌に原著論文として採択された(Stem Cell Res Ther. impact factor 4.211)。
Yields and chondrogenic potential of primary synovial mesenchymal stem cells are comparable between rheumatoid arthritis and osteoarthritis patients. Kohno Y, Otabe K, Sekiya I et al. Stem Cell Res Ther. 2017 May 16;8(1):115. doi: 10.1186/s13287-017-0572-8.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関節リウマチ(RA)における滑膜幹細胞の性質は依然未知のことが多く、本研究は関節リウマチの病態と関連した滑膜幹細胞の性質を明らかにすることを目的としている。まずRA膝および変形性関節症(OA)膝由来の初代滑膜幹細胞の性状を比較した。RA(n=8)および OA(n=8)の人工膝関節置換術(TKA)後に得られる滑膜を酵素処理後、10^4 個の滑膜有核細胞を60cm^2dishに6枚ずつ播種し、14 日間培養した。細胞数を評価後、表面抗原および多分化能を比較検討した。滑膜1mgあたりの有核細胞数はRA 8.4±3.9、OA 8.0±0.9(×10^3)個で、14 日間培養後の滑膜1mgあたりの収量は RA 0.7±0.4、OA 0.5±0.3(×10^6)個であり,いずれも有意差を認めなかった。CD44、CD73、CD90、CD105、CD45 の発現率に差を認めなかった。軟骨分化能に関して、軟骨ペレットの湿重量はRA 1.3±1.5 mg、OA1.1±1.4 mgで、1ペレットあたりのsGAG含有量はRA4.7±4.8 μg , OA 4.8±4.8μg であり、いずれも有意差はなかった . 脂肪分化能および石灰化能はRAとOAで同等であった。RA 膝由来の初代滑膜幹細胞の収量および軟骨分化能はOA 膝由来のものと同等であった。初代滑膜幹細胞の収量、軟骨分化能を比較した研究はこれまでなく、本結果はOA同様にRAでも軟骨・半月板再生が実現可能であることを示唆する 。この成果は日本整形外科学会基礎学術集会で発表するとともに、成果は査読付きの国際雑誌に原著論文として採択された(Stem Cell Res Ther. impact factor 4.211)。
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今後の研究の推進方策 |
今後は関節リウマチと変形性膝関節症の滑膜幹細胞について、細胞増殖能、表面抗原、分化能の違いと対応した薬剤応答性、サイトカインアレイや遺伝子発現レベルの差異についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
見込みより研究が順調に進捗し、条件設定段階や論文化するにあたりrevisionの際の追加実験のための試薬等に見込んでいた費用が抑えられた。一方で今年度は次段階の研究としてサイトカインアレイや遺伝子発現解析等で多額の試薬購入費が見込まれている。
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