研究課題/領域番号 |
17K16678
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
片桐 洋樹 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座助教 (50795028)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 膝軟骨損傷 / 変形性膝関節症 / FGF2 / FGFR3 / FGFR1 / IL1 / 炎症 |
研究実績の概要 |
膝軟骨損傷の疼痛は末期変形性膝関節症と同程度である。また膝軟骨損傷は変形性膝関節症へと進行する。しかしながら、膝軟骨損傷において変形性膝関節症への進行を止める有効な治療法はない。そのため新規治療法を必要とし、分子標的手法を用いた治療法が必要である。一方、FGF2は関節軟骨において恒常性に関わる重要な蛋白質である。レセプターFGFr1を介したシグナルと、FGFr3を介したシグナルでは細胞維持に関し異なる作用を示すことが知られており、新規治療法のターゲットとして期待されている。先行研究にて①ラットにおける骨軟骨欠損のクリティカルサイズが1.4㎜である事②骨軟骨損傷は周囲軟骨の代謝を変化させる事。そこで本研究の目的はIL1bのダウンストリームシグナルが軟骨細胞内のFGFレセプターの発現に関与する機序を調査、明らかにする。 本年度IL1β存在下でのFGF2の軟骨細胞への作用を調べた。IL1β、FGF2を培養液に添加し軟骨細胞への影響を検討した。細胞の形態的評価では、IL1β、FGF2添加グループで、多数の非接着細胞を認め細胞死が誘導された。それらの細胞を用いRNAを調べた。L1β、FGF2添加グループではACAN,Col2が低下し、PRG4が上昇した。IL1β添加グループではFGFr3の発現が低下していた、FGFr1/FGFr3のバランスに変化を認め、FGFr1の比率が増加していた。FGFr1のダウンストリームターゲットを調べた。Irf1、E2f1はともにIL1β、FGF2添加グループで上昇を認めた。また、この結果は軟骨欠損モデルの周囲軟骨にて免疫染色にて確認された。これらにより、骨軟骨損傷時、損傷部よりIL1βが分泌され、IL1βの作用によりFGFレセプターのタイプがFGFR3からFGFr1となる事によりFGF2の軟骨細胞への作用が変化する事がしめされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、研究計画の実施において特に問題点は観察されず、順調に推移している。本年度は、第一報目の成果をOsteoarthritis and Cartilage誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
炎症下のFGFr1拮抗薬による軟骨変性抑制効果の検証。FGFr1拮抗薬による軟骨細胞のIL1b,FGF2添加下での恒常性の検討。FGFr1拮抗薬の変形膝関節症モデルにおける変性進行予防の評価と機序の解明を行う。 具体的には FGFr1拮抗薬による軟骨細胞のIL1b,FGF2添加下での細胞死阻止、増殖能回復の検討。軟骨細胞に対しFGFr1の阻害薬Ponatinib、AZD4547などFGFreceptorへの親和性の異なる阻害薬をIL1b、FGF2と供に添加し、正常軟骨細胞、IL1bのみ添加した軟骨細胞と細胞形態、増殖能、FGFレセプターの発現、ダウンストリームターゲットの発現を比較、検討する。軟骨細胞をラット正常膝より分離。正常培養液にて3日間培養後、IL1b(10ng/ml)、FGF2(30ng/ml)を添加する。FGFレセプターへの異なる親和性を有する薬剤を添加し培養。ポジィティブコントロールとして無添加群、ネガティブコントロールとしてIL1bのみ添加群をを作成する。薬剤の効用の評価を3時間後、2日後、5日後に行う。 ①-2 FGFr1拮抗薬による軟骨変性進行抑制の評価と機序解明。 先行実験2で作成した軟骨欠損モデル、前実験の薬剤を注入し、軟骨変性進行抑制効果を評価する。サンプルは1、4、8週に屠殺、収集する。評価方法としては肉眼的評価、組織学的軟骨変性評価としてOARSIscore用い統計学的解析、疼痛評価として行動解析を行う。膝軟骨を摘出RNAを生成し発現をRNA-sequencingにより網羅的に調べ、qPCRにて個別定量的に調べる。前述のFGF2のシグナル伝達経路、ダウンストリームターゲットに加えRNA-sequencingにて変動のあったRNAを評価する。変性進行抑制効果と個別のRNA発現レベルの相関を調べ、機序を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は既存の薬剤を使用する事により節約ができた。次年度多くのqPCR,薬剤の使用、頻回の細胞培養、RNA-sequencing施行、複数の動物モデルを要する計画であり、次年度使用額として上記を要する。
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