研究実績の概要 |
膝関節骨軟骨損傷への新たな治療法の確立が望まれており、作用機序の解明が必要とされている。骨軟骨損傷は周囲軟骨の変性を起こす機序は分かっていない。本研究の目的はラットでの至適骨軟骨損傷サイズの決定。骨軟骨損傷と周囲軟骨変性の関連を明かすこと。 直径0.5 mm, 0.9 mm, 1.4 mm, 2.1 mmの異なるサイズのラット骨軟骨欠損の自然経過では、直径1.4㎜以上の欠損ではサフラニンO、Col1 col2の免染の染色性を認めず、骨軟骨欠損の再生は認めなかった。1.4㎜群での欠損部のRNAの発現レベルはアグリカン,col2が低下、col1が上昇していた。ラットにおけるクリティカルサイズは1.4㎜であった。 骨軟骨損傷の周囲軟骨のRNA発現は経時的にAggrecan(ACAN)、Col2にて低下していた。FGF2の発現が上昇していた。欠損部位ならびに周囲軟骨でIL1βのRNAの発現レベルの上昇を認めた。 IL1β存在下でのFGF2の軟骨細胞への作用を調べた。IL1β、FGF2添加グループで、多数の細胞死が誘導された。IL1β、FGF2添加グループではRNAの発現はACAN,Col2が低下し、PRG4が上昇を示した。 IL1β添加グループではFGFr3の発現が低下しており、FGFr1/FGFr3のバランスに変化を認め、FGFr1の比率が増加していた。続いて、FGF2、FGFr1のダウンストリームターゲットを調べた。Irf1、E2f1はともにIL1β、FGF2添加グループで上昇を認めた。また、この結果は軟骨欠損モデルの周囲軟骨にて免疫染色にて確認された。これらにより、骨軟骨損傷時、損傷部よりIL1βが分泌され、IL1βの作用によりFGFレセプターのタイプがFGFR3からFGFr1となる事によりFGF2の軟骨細胞への作用が変化する事がしめされた。
|