研究課題/領域番号 |
17K16686
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
村上 康平 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (60791837)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / baricitinib / JAK / RANKL / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
骨折は、骨に対して外力が加わり、骨の構造上の連続性が絶たれた状態である。本邦では、骨粗鬆症に伴う大腿骨の病的骨折の発生率が増加し続けており、超高齢社会を迎えていることから、今後さらなる増加が見込まれる。高齢者における骨折は、寝たきりになるリスクを高め、1万人以上の調査によると1年以内の死亡率は10.1%に至る。したがって、骨折を予防するためにも、骨粗鬆症の治癒は非常に重要なテーマである。 Janus Kinase(JAK)はⅠ型およびⅡ型サイトカイン受容体の細胞質領域に結合し、JAK/STAT経路と称されるシグナル伝達を担うリン酸化酵素である。哺乳類のJAKはJAK1、JAK2、JAK3、Tyrosine Kinase 2 (TYK2) の4種類が知られている。わずか4種類のJAKは、約40種類ものサイトカインやホルモンのシグナルを伝達し、免疫や造血など様々な生体機構に関与する。このことからJAK阻害薬は強力な抗サイトカイン治療薬として非常に注目されている。しかし、JAK阻害薬が骨代謝に与える影響は十分には調べられていない。 研究代表者は、まずin vitroでJAK阻害薬が破骨細胞形成に与える影響を調べた。その結果、JAK1/2選択的阻害薬であるbaricitinibは、骨吸収を担う破骨細胞の形成を抑制することを確かめた。その機序を詳細に調べたところ、baricitinibは骨芽細胞のRANKL発現を抑制することで、破骨細胞の分化を阻害していることを確かめた。さらにRNA干渉を用いたJAK1やJAK2のノックダウンでも、同様の現象が確かめられた。したがって、JAK1とJAK2は骨粗鬆症のような破骨細胞の機能が亢進する疾患の新規治療標的と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験が良好な成績をおさめているため。ここまでの成果を学術論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果より、JAK阻害薬は破骨細胞の分化を抑制することが明らかになった。当初は骨折を標的として研究を始めたが、破骨細胞が悪玉として機能する骨粗鬆症を標的とした方が良いと考えた。また骨粗鬆症の治療こそが骨折の予防に結び付くと考えられた。 今後は、JAK阻害薬の骨粗鬆症治療薬としての有用性を検討するために、以下の実験を行う。 実験① JAK阻害薬が骨芽細胞に与える影響について検討を行う。 実験② 骨粗鬆症モデルマウスへのJAK阻害薬の投与を行い、骨量の増減を確かめる。 これらの実験により、骨粗鬆症の病態でのJAK/STAT経路の役割を明らかにし、骨粗鬆症の新規治療薬としてのJAK阻害薬の可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
in vitroでの実験が予定よりも順調に進行したため、培養に関わる消耗品(ウシ胎児血清など)の使用量が少なくて済んだため。 次年度使用額は、新たなJAK阻害薬の購入に充てる。
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