研究実績の概要 |
JAK阻害薬は現在、強力な抗サイトカイン治療薬として注目されているが骨代謝に与える影響は十分には調べられていない。 2017年度に、実験①in vitroでJAK阻害薬が破骨細胞形成に与える影響を調べた。その結果、JAK1/2選択的阻害薬baricitinibと汎JAK阻害薬tofacitinibは、骨芽細胞のRANKL発現を抑制することで、破骨細胞の形成を抑制することを確かめた。したがって、JAK1/2は破骨細胞の機能が亢進する疾患の新規治療標的と考えられた。 この結果を踏まえて、当初は骨折を標的として研究を始めたが、破骨細胞が悪玉として機能する骨粗鬆症を標的とした方が良いと考え、2018年度は以下の実験を行った。 実験② in vitroでマウス頭頂骨由来初代培養骨芽細胞にアスコルビン酸、βグリセロリン酸、BMP2を添加して、分化を誘導した。この培養系にbaricitinibまたはtofacitinibを添加したところ、濃度依存的に石灰化が抑制された。 実験③ 骨粗鬆症モデルとして卵巣摘出(OVX)マウスを使用した。8週齢の雌マウスにOVXを施し、その後4週間baricitinib (10 mg/kg/day, i.p., sid) を投与した。4週後に大腿骨を採取し、マイクロCTで解析したところ、海綿骨量は溶媒群とbaricitinib群で有意差はなかった。次に、脛骨より採取したtotal RNAを使用してリアルタイムRT-PCRを行った。その結果、OVXによって脛骨でのRANKL発現は増加していたが、baricitinibはこれを有意に抑制した。他方、骨芽細胞マーカーであるCol1a1やBglap1の発現もbaricitinibによって抑制されていた。つまり、baricitinibはRANKLの発現を抑制して骨吸収を阻害するとともに、骨形成も阻害している可能性が考えられた。
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