研究課題/領域番号 |
17K16687
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
傍島 淳 信州大学, 医学部附属病院, 医員 (00770760)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膨張黒鉛 / スキャフォルド / カーボン素材 / 生体材料 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
膨張黒鉛の新しいバイオマテリアルとしての可能性を評価する.膨張黒鉛の骨形成能への影響に対する研究は我々がこれまでカーボン材料を生体材料として用いる研究を行ってきたからこそ行える世界で初めての研究であり,膨張黒鉛の骨親和性のみならず,in vivo,in vitroの実験を通じてカーボンナノマテリアルで見られた骨形成に対する優位性が連通多孔質構造によってさらに高まる可能性がある. 今回研究対象である膨張黒鉛と同様に,我々はこれまでに同じく炭素線維であるCNFによる骨形成試験を行ったがfiber周囲に骨形成を認めている.膨張黒鉛も同様に骨形成能があることが予想され,さらに良質の骨形成足場材としての効果が期待できる. 膨張黒鉛は工業用としてはその断熱性,難燃性から建築資材のシーリングやコーティング材料として用いられたり,またその吸着能も高く重油の回収素材などとしても研究がなされている.一方で,炭素素材を生体材料とするこころみは1960年代の人工弁の研究に端を発しており,その抗血栓性,高い生体親和性,高い耐摩耗性,耐久性などの利点から,その後様々な材料が発表されている.しかしながら膨張黒鉛のバイオマテリアルとしての研究は少なく生体親和性や骨形成能に関する報告がない挑戦的な研究である.そのためまずは生体安全性の評価,並びに他の既存のスキャフォルドと比較しての骨形成の具合を検討する必要がある. 本研究が成功すれば,今まで解明されなかった骨形成の上位制御機構がin vitroレベルで解明されることとなり,骨代謝の研究領域において大きな転機となるのではなかろうか.骨代謝を制御する実態をとらえ,それを制御するツールを手に入れることができれば,単に骨欠損病変に対する足場材としての応用のみならず,さらには骨粗鬆症を含む骨代謝に関連する系統疾患全般において病態研究・治療学ともに,革命的な発見となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、膨張黒鉛をインプラント材として使用することを想定した安全性確認を行った.細胞毒性試験としてチャイニーズハムスター肺由来線維芽細胞株(V79細胞)を用いたアラマーブルー法を施行する.MEMを培地に細胞培養を行い,30分間ソニケーションをかけた膨張黒鉛をそれぞれの10,100,200μg/mlの群に分け,分散剤とともに加えた.24時間後,48時間後にそれぞれの群で評価を行った.分散の仕方がいまだ不均一である点もあり結果はまだ不十分ではあるが,検討方法としては確立していると考えている. 2、骨親和性を評価する実験として,マウスの背筋内にコラーゲンとrhBMP-2を5μg添加した膨張黒鉛を埋植して異所性骨化ができるか否かの評価を行った.これに対してcontrolとしてタイプ1コラーゲンのシートにrhBMP-2を5μg添加した群を用意した.異所性骨化を評価するために,6週のddYマウスの背部皮下に上記二群を埋植した.埋植手術後1,3週で異所性骨化について検討する.それぞれの時期に,microCTにより視覚化し解析ソフトによって骨の定量化を行っている最中である.さらに膨張黒鉛埋植背筋とその周囲組織を摘出し,組織標本を作製した.組織で確認すると新生骨とともに炎症性の瘢痕組織もみられ,使用の条件などの設定を見直して検討している最中である.おおむね順調な進捗と考える.
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今後の研究の推進方策 |
異所性骨化の評価として再度マウスの背筋内に膨張黒鉛を移植して骨の再生の程度を検討して異所性骨化の評価を行う. データがそろい次第論文投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
十分な結果がまだ出ていない部分もあり,追加実験が必要で、また論文発表や英文校正などにまだこれから費用が必要である.
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