研究課題
本研究では、Drug repositioningの手法を用いて、脊髄損傷における治療を標的とした薬剤を同定・機能解析することを目的とする。このために既に脊髄運動神経細胞の増殖実験により候補となっているDrug XおよびYの神経細胞または動物個体での安全性、治療方法の確立を行う。平成29年度は脊髄損傷圧挫モデルマウスに対する上記2薬の効果、特に安全性を検討した。8週齢のC57/BL6雌マウスに胸椎レベルで脊髄に100kDynの圧挫を加え、脊髄圧挫損傷モデルを作製した。術当日より毎日一回薬剤を投与しながら下肢の運動機能を示すBMSスコアを随時測定した結果、時系列で測定・解析したところ、術後1週より薬剤投与群では運動機能の改善が認められ、術後4週ではBMSスコアが、非薬剤投与群1.2に比べてDrugX投与群は2.5、DrugY投与群は3.1となり、有意な改善を示した (p<0.01) 。また運動機能評価としてRota rodを用いた検査でも非薬剤投与群と比較して、薬剤投与群は有意な改善を示した。さらに組織学的評価を行うため、マウスは損傷後28日目に灌流固定を行い、Nissl/Luxol fast blue染色にて神経細胞数は薬剤投与群は非投与群に比し、有意に多い結果となった。本研究により、脊髄損傷の治療に新たな手法と有効な薬剤を提案するだけでなく、将来的に圧迫性脊髄症および難治性脊髄変性疾患に対しても、応用可能な治療の足がかりとしてきたい。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度の研究計画のみで考えると、開始前の予定と比べ、データ解析が進んでおらず、現状は75%程度の進捗率と考えている。しかし、もともと30年度に予定していた実験の一部も先行的に開始しており、総合的に判断すると、ほぼ予定通りに研究が進んでいるものと考える。
当初は薬剤効果の作用機序をin vitroでの継続調査を考えていたが、in vivoモデルの検体から解析を行うことで、より実状に即したデータ解析が可能になると考えられるため、変更することも考慮していきたい。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: -
10.1038/s41598-017-18753-5
Journal of Orthopedic Science
巻: Epub ahead of print ページ: -
10.1016/j.jos.2017.08.022.