研究課題/領域番号 |
17K16693
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
眞田 洋平 広島大学, 病院(医), 研究員 (50796117)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | microRNA / osteoarthritis / obesity / hepatic steatosis |
研究実績の概要 |
本研究は肥満によるOA発症機構の解明を目指し、糖・脂質代謝制御因子としてのみならず、軟骨細胞において高発現し、かつ軟骨細胞由来Exosome中に高分泌されているmiR-26aの機能に着目し、肥満による全身の代謝障害とOA発症の関わりをmicroRNAの役割に着目して明らかにしていくものである。8週齢野生型マウスに高脂肪食(HFD60)を12週間、または16週間給餌し、食事誘導性肥満モデルマウスを作出した。肥満誘導マウスは体重、体脂肪率が増加し、血清中トリグリセリドの増加や耐糖能の悪化など一般的な肥満様症状を呈したが、肥満誘導による軟骨組織への影響は認められなかったことから、肥満による糖・脂質異常症は軟骨変性のイニシエーターではなく、増悪因子の一つであると考えられた。本研究では、pri-miR-26a-1を欠損させたmiR-26a-1 KOマウス、ならびにpri-miR-26a-2を欠損させたmiR-26a-2 KOマウスをそれぞれ樹立し、それらKOマウス同士の交配によりmiR-26a-1/2 DKOマウスを樹立した。作出した26a1/2 DKOマウスの各組織において成熟型microRNA-26a-5pの発現は完全に消失していることを確認し、26a1/2 DKOマウスは、6カ月齢で自然発症的に肝臓に脂質が蓄積する脂肪肝を呈した。さらには、12ヶ月齢という早期から軟骨組織の一部変性が認められるなど、26a1/2 DKOマウスは加齢に伴う軟骨変性と肝臓脂質異常を発症することが明らかになった。現在、軟骨・並びに肝臓組織におけるmiR-26aの機能を明らかにするとともに、26a1/2 DKOマウスとCol2-cre-26a Tgマウスとの交配を開始し、軟骨組織特異的にmiR-26aをレスキューするモデルマウスの準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26a-1/2 DKOマウスの解析を進めており、6カ月齢早期から肝臓への脂肪沈着が認められる脂質異常症、ならびに12ヶ月齢では軟骨変性を来すことを見出している。さらには26a1/2 DKOマウスとCol2-cre-26a Tgマウスとの交配により、軟骨組織特異的にmiR-26a-5pをレスキューするモデルマウスを樹立しており、26a1/2 DKOマウスで認められた形質が軟骨組織におけるmiR-26aの機能回復によって影響を受けるか検討を進める予定である。また、26a1/2 DKOマウスは早期に軟骨変性を来したことから、軟骨をはじめとした各組織におけるmiR-26aの標的遺伝子についてプロテオミクス、ならびにRNA-seqによる解析を行う準備を進めており、標的遺伝子の同定からmiR-26aの軟骨および糖・脂質代謝における役割を探ることで肥満とOAの関係について明らかにしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
樹立した各KOマウス(miR26a-1 KO、miR26a-2 KO、miR-26a 1/2 DKO)のP0時点における骨格標本を作製し、骨格系の発生に及ぼす影響について詳細に解析を行う。さらにはμCT解析による継時的な骨格への影響、ならびに骨形態解析やin vitroにおける破骨細胞分化試験を実施し、骨代謝に及ぼす影響についても検討を行う。肥満・脂肪肝誘導、または老化による全身の代謝に及ぼす影響について、血清を用いた生化学的な解析に加えて、遺伝子発現解析、膝関節組織のみならず脊椎椎間板や股関節、さらには肝臓組織の組織学的な解析を実施していく。軟骨特異的miR-26aレスキューマウスの血清中のmiR-26aの発現解析、ならびに全身の代謝、各組織に及ぼす軟骨組織miR-26aの役割について検討を進めて行く。さらには、RNA-seq解析に加えてプロテオミクス解析を実施し、軟骨組織におけるmiR-26a標的遺伝子の同定および、それら標的遺伝子の機能についても検討を進める。また、miR26aをコードする異なる染色体上の前駆体pri-miR26a-1、およびpri-miR-26a-2、ならびにホスト遺伝子を含めた各組織における発現様式の差異についてTSS上流領域の解析を実施し検討を進めて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部委託する解析サンプル数が予定より少なくなったため、差額が生じた。 生じた差額は次年度にサンプル数を増やして行う生化学解析に使用する予定である。
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