本研究は、糖・脂質代謝制御因子であり、さらに軟骨細胞中、および軟骨細胞由来Exosome中に高発現しているmiR-26aに着目し、肥満による全身の代謝障害とOA発症の関わりをmiR-26aの機能解析に基づいて解明していくものである。miR-26a-1/2 DKOマウス(miR-26a KO マウス)を作出し高脂肪食負荷による肥満モデルを作製した。インスリン抵抗性試験、耐糖能試験に加え、遺伝子発現解析を実施した。肥満に伴う野生型マウスのmiR-26aの発現は、脂肪組織、肝臓で低下したが、血中では変化しなかった。高脂肪食群では体脂肪量の増加、血清中TG量、ALT値が上昇し、耐糖能の悪化、インスリン抵抗性が生じたが、miR-26a KOによる糖・脂質代謝の異常は認められなかった。膝関節組織切片を作製し、Safranin-O染色やType 2コラーゲン免疫染色を実施したが、従来報告されてきた肥満によるOA誘導モデルの結果と異なり、軟骨変性や骨棘形成など、OA病変の進行は本研究では認められなかった。興味深いことにmiR-26a KOによる通常食下での骨格発生や成長に異常は認められかったが、高脂肪食を給餌したmiR-26a KOマウスは、野生型マウスと比較して低身長となったことから、高エネルギー下で骨成長が遅延している可能性が示された。miR-26aは、エネルギー環境に応答して軟骨形成や骨成長に関わるシグナルを制御していると考えられる。さらに軟骨変性におけるmiR-26aの機能を明らかにするために、加齢モデルを作製した。18カ月齢軟における軟骨特異的miR-26 Tgマウスでは軟骨変性が一部抑制されていたことから、miR-26aは軟骨恒常性に関わることが示唆された。さらには、MultiOmicss解析結果から45個のmiR-26a標的候補因子を同定し、詳細は現在解析中である。
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