研究課題/領域番号 |
17K16694
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
殿谷 一朗 徳島大学, 病院, 特任講師 (30444722)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 骨格筋 |
研究実績の概要 |
骨延長術は四肢短縮・変形などに対するほぼ唯一の治療方法として知られている。この治療方法は組織に伸張ストレスを与え、周辺の骨・軟部組織までをも新生させるが、骨格筋にも伸張ストレスがかかる。一般に筋損傷が生じると、マクロファージを主とした浸潤炎症細胞や破綻血管などから様々なgrowth factorやサイトカインが放出され、筋衛星細胞による筋再生のほか、線維芽細胞の活性化によるコラーゲンなどの細胞外マトリックスの増加が起こる。筋成長・成熟がすすむにつれて増加した細胞外マトリックスは分解・リモデリングされ、骨格筋が修復する。しかし、骨延長術のように慢性的な伸張ストレスが加わわると、持続する筋損傷に筋修復が追い付かず、しばしば筋線維は委縮し、細胞外マトリックスが高度に残存し、骨格筋に線維化が起こる。筋間質成分、つまりコラーゲンをはじめとする細胞外マトリックスの増加により線維化に陥った骨格筋は柔軟性を失い、拘縮・筋力低下により日常生活に多大な障害をきたす。これまで線維化した骨格筋を機能的に回復させる有効な手段は確立されておらず、線維化を軽減あるいは抑制し、筋再生を促進する画期的な治療が望まれる。多血小板血漿とは血小板を高濃度に濃縮した血漿のことで、3.5~4.5倍の高濃度の血小板が含まれており、様々な成長因子を含むものであるが、マウス腿骨延長モデルにおいて、マウスより採取した血液を用いて多血小板血漿を作成し、延長筋に多血小板血漿を局所注射投与し、骨格筋ならびに筋間質の細胞外マトリックスの組成・構造を組織学的ならびに分子生物学的に解析し、多血小板血漿が骨格筋ならびに細胞外マトリックスに及ぼす効果を多血小板血漿を投与していない群と比較して研究・解析をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結果を学会発表や投稿予定である。また現在マウス下腿骨延長モデルにおいて、多血小板血漿投与群と非投与群において骨延長後の骨格筋を時系列に沿って解析し、それぞれの時点での解析をすすめている。特に骨格筋の線維化に注目して、骨格筋内にどの程度のコラーゲンが含まれているか、組織学的また分子生物学的に解析し、定量化を試みている。また、多血小板血漿には様々な種類や作成方法があるが、どの作成方法で得られた多血小板血漿が多くの成長因子を含んでいるか検討している。
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今後の研究の推進方策 |
マウス腿骨延長モデルの作成は確立されているため、動物実験は計画通り行われている。今後可能であれば、多血小板血漿の生成方法、骨延長のスピード等が骨格筋ならびに細胞外マトリックスに及ぼす効果も調べる予定である。また可能であれば、細胞培養実験において、マウス筋芽細胞C2C12を筋管に分化させ、培養細胞伸展刺激装置にて伸張ストレスを加え、細胞レベルでの延長モデルを作成すし、マウスより採取した血液を用いて多血小板血漿を作成し、多血小板血漿を筋管に投与すし、伸張ストレスに対する筋管の変化を細胞レベルで観察し、多血小板血漿が筋管に与える影響を解析する予定である。また可能であれば、採取した下腿筋において、針電極を用いて電気刺激を加え、筋を完全強縮させ、筋トルク測定装置を用いて、筋張力-筋長関係を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬購入費や実験用動物購入費、旅費が見込みより少なかったため、差が生じたと思われる。また、最適な多血小板血漿キットの検討するため、多血小板血漿内の成長因子をELISA法にて測定したが、その際に予想より多くの金額を要した影響もあると思われる。また、参加予定していた学会の増減のため、その旅費分の金額が影響し可能性もあると思われる。
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