研究課題/領域番号 |
17K16695
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐藤 紀 徳島大学, 病院, 特任講師 (00448333)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 頚椎症性脊髄症 / ミエロパチーハンド / 三次元動作解析 / 手指巧緻運動障害 |
研究実績の概要 |
頚椎症性脊髄症(以下、頚髄症)患者に特徴的な上肢機能障害としてミエロパチーハンドがある。その特徴として、(1)尺側の手指の内転・伸展不全、(2)手指の素早い握り・開きが困難になっていくことである。ミエロパチーハンドが生じると、様々な日常生活動作(ADL)の障害をきたすことがあり、麻痺が進行すると、除圧術を行っても重度のADL障害を後遺することがある。これまで、ミエロパチーハンドの評価方法として、上記前者(1)に対しFinger escape sign、後者(2)に対し10秒テストが行われてきた。これら2つの評価方法は外来診療において簡便にでき、現在でも臨床現場においてよく用いられている有用な評価方法であるが、ミエロパチーハンドがどのような動きをするのかを解明する方法ではない。また、ミエロパチーハンドに対する定量的は評価や有効なリハビリテーションは確立されたものは未だ無い。 これまでは手指の動きの解析に用いられなかった三次元動作解析装置を用いて、手指運動の新規定量評価法を開発し、ミエロパチーハンドの動きの解明を行えないかという着想を得た。研究代表者は、手指測定用の三次元動作解析用のフレームを考案・作成し、手指の動きを定量的に評価することを試み、健常者の手指の動きを定量的に評価することに成功した。本研究では、考案した手指用三次元動作解析システムを用いて、頚髄症患者の手指の動きの定量的評価方法を確立し、ミエロパチーハンドの手指の動きの特性および回復過程の特徴を明らかにすることを目的とした。 今年度は、頚髄症患者の手指の定量的評価をより簡易化するため、貼付方法の簡易化を行い、実用化に向けて、モデルの確立を行った。簡易化モデルを用いて、手術前後での手指の動きの回復過程の特徴を調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頚髄症患者の上肢手指の動きを検証するための比較するデータとして、健常者の手指の動きを三次元動作解析装置にて測定し、定量的評価を行った。どのような動作課題が手指の三次元動作解析に適しているのかが不明であったため、動作課題の検討も同時に行った。 また、頚髄症患者の手指の動きを三次元動作解析にて測定した。術前・術後の経時的な測定・評価を行った。手指に貼付した極小反射マーカーの動きを捉えることができ、各関節の角度変化、角速度変化等の定量化が可能となった。頚髄症患者の手指の動きの術前・術後の変化、回復過程の変化の傾向を捉えることができた。 研究を進めるにつれて、新たな課題も明らかとなった。これまでは、多数の極小反射マーカーを手指に貼付していたが、貼付するのに時間を要し、測定後に極小反射マーカーを外すのにも時間を要していた。本研究を実用化するために、極小反射マーカー貼付の簡易化が必要であった。そこで、今年度は、極小マーカーの貼付方法の簡易化について検討した。 研究当初は多数の極小反射マーカー貼付方法の方が関節の動きを忠実に再現していると考えていたが、貼付方法を簡易化することによっても、同様の結果を得ることができた。そのため、簡易化した貼付方法で、頚髄症患者の術前術後の手指の動きの変化および回復過程の変化の傾向を捉えることができた。 本研究において必須の極小反射マーカーが一時的に入手不能となった(製造が停滞していたため)時期があった点、また、上記のようにマーカー貼付方法の簡易化モデルの検討を要した点、測定プログラムを再構築する必要があった点の3点において、当初の研究計画よりやや遅れたが、マーカー入手再開が可能となり、モデルが確立してからは概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
簡易化モデルの確立ができたので、引き続き、現在測定を行っている頚髄症患者および新規患者も含めて、術前術後の手指の三次元動作解析継続を行う。また、これまで三次元動作解析を行った被験者のデータの解析も引き続き行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
①極小反射マーカーが一時的に入手不能となっていた(製造が停滞していたため)点、②マーカー貼付方法の簡易化モデルの検討を要した点、③測定プログラムの再構築を要した点、以上3点のため、次年度使用額が生じた。その後、極小マーカーが再入手可能となり、簡易化モデルの確立もできたため、次年度極小反射マーカー等を購入する予定である。
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