研究課題/領域番号 |
17K16696
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
薛 宇孝 九州大学, 大学病院, 助教 (40727020)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | HIF-1α / 低酸素 / 悪性末梢神経鞘腫瘍 / 平滑筋肉腫 / Tubulin |
研究実績の概要 |
悪性骨軟部腫瘍における低酸素環境の影響を調査するため様々な肉腫細胞株においてHIF-1の発現を調べた。その結果、悪性末梢神経鞘腫瘍の複数の細胞株において、低酸素環境だけでなく常圧酸素環境においてもHIF-1αが高発現していることがわかった。悪性末梢神経鞘腫瘍の臨床サンプルを用いた検討では、HIF-1αの発現は予後不良と関係していた。さらに、HIF-1αの発現をSiRNAで抑える、あるいはHIF-1α阻害剤であるケトミンを用いることにより、低酸素、常圧酸素いずれの環境においても悪性末梢神経鞘腫瘍の増殖を抑制することが可能であった。(PLoS One. 2017, Fukushima S)HIF-1α経路はエリブリンメシル酸塩のターゲットとして非常に有望であり、エリブリンがHIF-1αを介して腫瘍増殖に与える影響を現在解析中である。 また、エリブリンがターゲットとしている微小管を形成するタンパクであるTubulinのサブユニットの発現の差異によって、エリブリンの感受性や腫瘍の増殖活性が規定される可能性についても探索している。平滑筋肉腫細胞株においてエリブリン耐性株の作成に成功し、耐性株でのTubulinのサブユニット解析を行い、Tubulinβ3の高発現が耐性化に関与している可能性が示唆された。現在さらなる解析を進行中である。 臨床面においては、悪性骨軟部腫瘍におけるエリブリンの投与状況とその効果を解析し、研究会にて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎的検証、実験においては低酸素環境の関与やエリブリンメシル酸塩の作用機序についての解析が予想よりも順調に進んでいる。ただし臨床での解析については、投与症例が予想を下回っていること、FMISO-PETの承認がおりていないことからやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
エリブリンメシル酸塩に対する平滑筋肉腫細胞株の耐性化の機序の解明を通じて、エリブリンの作用機序、さらには効果予測マーカーの探索を行う。特にTubulinのサブユニットであるTubulinβ3は有力な候補であり、解析を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度にTissue microarray作成機器およびマウス解剖用ルーペを購入予定であったが、前者は予算超過、後者は次年度に使用するため、次年度へ繰り越して使用することとなった。
|