本研究の目的は、腰痛、姿勢不良に対する体幹筋力トレーニングの効果を多面的・客観的に評価することである。腰痛と姿勢不良を有する一般住民を、ロコモ予防体操群、ロコモ予防体操+体幹筋力トレーニング群の2 群に分け、介入前後の腰痛、健康関連QOL、立位姿勢、身体機能、脊柱周囲筋の形態学的変化(MRI検査)、電気生理学的変化(筋電図検査)を評価した。 平成31年度は、和歌山県内の市町村から本研究参加者を選定し、6カ月間の運動介入前後の各パラメーターの計測、解析を行った。ロコモ予防体操+体幹筋トレーニング群については参加者の獲得が困難であり、既に実施したパイロットスタディで同様の介入を行った24人のデータを利用することとした。ロコモ予防体操群については、印南町とみなべ町から合計33人に参加していただき、介入後調査に参加できなかった9人および筋電図検査の評価ができなかった2人を除く、22人の有効なデータを得た。しかし、介入後調査は令和2年3月に行ったが、新型コロナウィルスの影響で、MRIおよび筋電図検査を行うことができなかった。その他のパラメーターの測定については、各自治体と十分な協議を行い、同意を得られた参加者にのみ、感染防御を徹底したうえで行った。 ロコモ予防体操+体幹筋力トレーニング群では、介入前後で、腰痛、立位姿勢(脊柱傾斜角、腰椎前弯角)、身体機能(10m歩行速度、2ステップテスト、体幹伸展最大筋力)、健康関連QOLが改善し、さらに、脊柱周囲筋(L4/5、Th12/L1多裂筋および脊柱起立筋、L4/5大腰筋)の横断面積の増加を認めた。脊柱周囲筋の電気生理学的な組成割合には有意な変化を認めなかった。一方、ロコモ予防体操群では、介入前後で、一部身体機能の改善を認めたが、腰痛、立位姿勢、健康関連QOLに有意な変化を認めなかった。腰痛、姿勢不良に対する体幹筋力トレーニングの有効性を認めた。
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