研究実績の概要 |
昨年度までに椎間板傷害に増加するM1およびM2マクロファージが神経成長因子(NGF)の発現を制御している可能性を示した。本年度はM1,M2マクロファージの起源解析およびヒト椎間板におけるNGF制御を検討した。C57/BL6Jマウスに10.5 Gy放射線照射後、GFPトランスジェニックマウス骨髄より採取した有核細胞を移植した。移植3か月後、末梢血を用いたキメラ率を検討後、27G針を用いて椎間板傷害モデルを作製した。傷害後、椎間板を採取し、フローサイトメトリーを用いて骨髄由来マクロファージ(GFP+F4/80+CD11b+細胞)と内在性マクロファージ(GFP-F4/80+CD11b+)の割合を検討した。また、骨髄由来、内在性マクロファージにおけるCD86(M1 maker)およびCD206(M2 marker)の陽性を検討した。末梢血のGFPキメラ率はいずれの個体も95%以上であった。傷害後1日目からGFP+F4/80+CD11b+細胞は増加し、その割合はGFP-F4/80+CD11b+細胞に比べ有意に多かった。GFP+F4/80+CD11b+細胞の一部はCD86+陽性細胞であったが、GFP-F4/80+CD11b+細胞はCD86陰性であった。一方、CD206陽性細胞はGFP-F4/80+CD11b+で多く認められた。M1マクロファージは動員性、M2マクロファージは内在性マクロファージに由来していた。ヒト椎間板細胞に対しM1, M2産生サイトカイン TNF-a, TGF-bによる刺激を行った結果、NGFの発現が亢進した。このことから動員性および内因性マクロファージが液性因子を介してNGFの制御に関与している可能性が示唆された。本機構は椎間板性腰痛機序に重要な役割を果たしているかもしれない。
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