1:我々は腱・靱帯における運動応答性遺伝子Mohawk(Mkx)を介した成熟過程を、遺伝子レベルとコラーゲン線維レベルで明らかにしてきた。本研究では野生型マウスとMkxノックアウトマウスのアキレス腱を用い、トレッドミルによる負荷試験を施行し、力学的評価を行った。野生型マウスはMkxノックアウトマウスと比較し、力学強度に優れていた。野生型マウスアキレス腱の電子顕微鏡像ではコラーゲン線維計の増大が確認されたが、力学試験では優位な差を認めなかった。原因としては個体が小さいこと、正確な評価が困難であることが挙げられる。特にアキレス腱近位部は筋・腱移行部であるため、強度の低い筋部での断裂も、結果のばらつきに関与していると考えた。今後は腱断裂の再評価を行っていく。
2:腱・靱帯の成熟・修復メカニズムは臨床で非常に重要である。特に靱帯断裂後の腱による靱帯再建は臨床的にもスタンダードな手術方法として用いられている。しかし、再建靱帯の成熟・修復は時間のかかるプロセスであり、移植腱が手術後に脆弱化し、再断裂のリスクが高いことが報告されている。そこで我々は移植腱が成熟していく過程をコラーゲン架橋を用いて評価してきた。本研究では今まで困難とされてきた腱・骨付着部の生着を促進する目的でチタンウェブを移植腱に用いる実験をミニブタを用いて行った。その結果移植腱においては15週でチタンウェブを用いていないコントロールの移植腱と比較し、優位にコラーゲン架橋量の増加と成熟架橋形成の増加、そしてより正常な腱に近いコラーゲン成熟パターンを認めた。これらのことから腱・骨付着部の促進により腱の靱帯化(Ligamentization)が促進されることを示すことができた。
以上の結果から、腱・骨付着部の強固な生着が移植腱への運動刺激の伝達に重要であり、移植腱の成熟に繋がることが示唆された。
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