ホウ素中性子捕捉療法は,腫瘍細胞に集積したホウ素(主にp-borono-L-phenylalanine,L-BPA)に対する熱中性子の照射により腫瘍細胞を選択的に死滅させる新たな治療方法として期待されている. 本研究では,整形外科領域での骨軟部悪性腫瘍に対するBNCTの適応拡大を考え,整形外科領域で最も多い悪性骨腫瘍である癌の骨転移に対するBNCTの適応を検討した. 昨年度までの検討で,骨転移の臨床症例が多く報告されている乳癌,肺癌について,検討を行った.ヒト由来乳癌細胞株であるMDA-MB-231-luc,ヒト由来肺癌由来細胞株であるA549-lucを用いて,L-BPAの取込評価ならびにリアルタイムPCR法にてLAT1の発現量を定量したところ,L-BPAの取込は濃度依存的に増大し,その取込はLAT1の発現に依存していると考えられる. 次に両細胞株を用いた骨転移担がん動物モデルを作成し,L-BPAを用いた体内動態評価を行ったところ,BNCTによる治療に適したホウ素集積はいずれの担がん動物モデルでも確認され,LAT1の発現の多いA549-lucでより高い集積を示すことがわかった.さらに投与後の経過時間を考慮した熱中性子照射は投与1時間後から約1時間の照射であることが示された. 抗腫瘍効果の評価では,L-BPA投与後に熱中性子照射によるBNCTを行ったところ,双方の細胞株担がん動物において,抗腫瘍効果が見られることが示されたが,腫瘍が大きい場合においては,抗腫瘍効果が強くはみられない場合があった.これはL-BPAの取込は細胞の増殖に依存するため,休止期などのL-BPAを取り込みにくい細胞が原因と考えられるため,細胞内に取り込まれなくても効果が期待できるガドリニウムを用いた新規製剤の開発とその評価を行い,細胞表面への付着と,その抗腫瘍効果が粒子径に依存することを示した.
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