研究実績の概要 |
思春期特発性側彎症(Adolescent Idiopathic Scoliosis: AIS)は、全世界で、人口の2-4%に発症するcommon diseaseで、その病因の解明、効果的な治療法の開発は、世界の医療、医療経済上の大きな課題となっている。先に全ゲノムレベルのケース・コントロール相関解析(Genome-Wide Association Study: GWAS)によりいくつかの原因遺伝子(AIS疾患感受性遺伝子)が同定された(Takahashi et al. Nat Genet 2011, Kou et al. Nat Genet 2013)が、AISの分子病態の解明には繋がっていない。 本研究では、GWASにより発見された遺伝子のひとつであるGPR126(G-protein-coupled receptor 126)を突破口に、脊椎の形成、成長、発達における遺伝子機能の解析によるAISの分子病態の解明を目指した。以下の結果を得た。 1)軟骨様細胞株、iPS細胞等を用い、細胞レベルで、GPR126をはじめとする脊椎形成関連遺伝子の機能を明らかにした(Otomo et al. J Hum Genet 2018)。TBX6、LFNGなどのいわゆる”segmentation clock gene”が脊椎の分節化に重要で、GPR126はその下流にあることがわかった。 2)マウスの成長過程の脊椎におけるGpr126の発現解析を行い、遺伝子発現の部位、時期などを個体レベルで明らかにした。 3)タモキシフェン誘導性遺伝子改変システムを用いて、時期および軟骨特異的にGpr126をノックアウトしたcKOマウス(Sox9-CreERT2;Gpr126fl/flマウス)を作製した。このマウスを用いて、発生・成長過程の脊椎におけるGpr126の機能、側弯の発生メカニズムを解析中。
|