研究実績の概要 |
近年我々は、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターあるいはアンチセンス遺伝子導入を用いた遺伝子治療が神経障害性疼痛の治療に有効であることを証明した。また、神経障害性疼痛発症に神経膠細胞から放出されるTNF-αが強く関わっていることを明らかにした。本研究では、これらの研究を踏まえ、脊髄後角におけるTNF-αの発現に着目し、TNF-αを標的とした遺伝子治療の有効性とそのメカニズムを解明する。 TNF-αを標的としたHSVベクターあるいはアンチセンス遺伝子導入を用いた遺伝子治療の有効性とそのメカニズムを解明するために研究計画を行った。① 神経障害性モデルを作成し機械刺激性アロディニアと温熱性痛覚過敏反応の経時的変化を明らかにする。② 脊髄後角のTNF-αの発現がHSVベクターあるいはアンチセンス法で抑制されるかをWestern blot法で評価する。③ モデルラットにTNF-αを標的とした遺伝子治療を行い、機械刺激性アロディニアあるいは温熱性痛覚過敏反応の経時的変化とTNF-αの発現を評価する。④ TNF-αを標的とした遺伝子治療に伴う、神経障害性疼痛の発症にかかわると考えられている活性酸素,Wnt5a,pC/EBPβの発現を免疫染色法あるいはWestern blot法を用いて解析する。 治療効果が期待されるT0TNFSRをラットに注入すると疼痛の機械的閾値が上昇することが、明らかとなった。つまり、この結果はTNF-αを標的とした遺伝子治療が神経障害性疼痛の治療に有効であることを意味する。また、その過程で活性酸素と神経可塑性に関与するpC/EBPβが深く関わっていることを併せて明らかにした。これらの知見を英文誌に発表した。また、更なる鎮痛に関わるタンパク質を解析し、神経障害性疼痛に関するpathwayを解明中である。
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