研究課題
分娩直前の生理的変化が神経障害性疼痛に与える影響についてはいまだ不明な部分が多く、これまでグリア細胞や炎症性サイトカインとの関係性などに注目して研究を行ってきた。神経障害性疼痛を軽減させるカギが妊娠・分娩という生理的な変化に潜んでいることは明らかになりつつある。本研究ではほかの神経障害性疼痛モデルにて関与が明らかである活性酸素に注目し治療ターゲットとして検討している。行動学的検討については分娩直前に疼痛閾値が上昇することを明らかにしており、現在その機序について検索を進めている。そのため分娩直前の①活性酸素の変化を明らかにするために脊髄後角におけるMitoSox Redの定量を免疫染色にて行っており、変化を認めているところである。②また並行して脊髄においてミトコンドリアでの活性酸素の産生に大きくかかわっているDrp1の定量をウエスタンブロットにて明らかにしようと研究を継続中である。おおむね計画通りに進行しており、本年度は③ミトコンドリアで産生された活性酸素からの下流シグナルであるpCREB、pC/EBPβといったタンパクへの影響を確認しながら、妊娠→生理的変化→活性酸素に及ぼす影響について機序も踏まえて検討していく予定である。またそのほかに活性酸素の産生、および情報伝達にかかわるとされているタンパクなども考慮し、研究を広げていく予定である。これらの神経障害性疼痛に及ぼす妊娠の影響が明らかになれば、どの段階かにおいて介入することで臨床現場で多数の患者が苦しんでいる神経障害性疼痛の改善の一助となっていくと考えている。
2: おおむね順調に進展している
実験開始直後は妊娠ラットを作成し、分娩時期を予測することが困難であったが、当大学の動物実験技術支援部門の協力を得ることができ、安定したモデルを作成することが可能となった。行動学的検討は終了しており、免疫染色およびウエスタンブロットのためのモデル作成を行い、順次染色や電気泳動などを条件を設定しながら進めているところである。ただし、妊娠ラットを形成するまでに1クールで21日間は必要でありその前に馴化期間なども考えると、どんどんモデルを作成することはできずに、ある程度の時間を有している。また条件設定に関しても試行錯誤を繰り返しながらであるため少しずつ前進しているという現状である。しかしながら、多方面と協力することにより一つ一つの課題を乗り越え前進は認められている。
最終的な目標としては神経障害性疼痛の治療のターゲットとしての活性酸素に迫ることである。その機序が妊娠・分娩といった生理学的変化に影響されるのであればそこからアプローチできることがあると考える。まずは妊娠・分娩が神経障害性疼痛を減弱させる機序について検討を行い、そこに活性酸素が影響しているのであれば、活性酸素の産生および下流シグナルへの情報伝達において阻害できる要因を探し、臨床応用の道を探していければと考える。そのためにも活性酸素の産生および下流シグナルであるpCREB、pC/EBPβなどの動向について明らかにすることが先決である。もともと生体に備わった生理的な変化が治療になりうると考えられるので、興味深いと考えている。
研究は概ね順調に進みつつあるが、計画時点よりも免疫染色のTrialでの結果がやや遅れており、試行錯誤を繰り返しているため実験用動物の購入数や試薬などの購入がやや少なめとなり、次年度使用額が生じた。Trialにてしっかりとした結果を出すことができたのち次年度での購入実験動物などが増える予定である。またもう少し結果が集まった時点でAO機器、消耗機材や麻酔薬などの必要数も増える予定であるため次年度へ繰り越し、計画的に使用する。
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