本研究の目標は難治性の末梢性神経障害性痛に対する新規治療法の開発であるが、最大の問題点は、現存する動物モデルではシュワン様細胞移植などの新規再生医療の治療効果を判定できないことであった。そこで昨年度はラット坐骨神経を一定の時間(10分間)、一定の力(60g)で圧迫することで神経障害性痛の特徴であるアロディニアおよび痛覚過敏を約4週間引き起こすラットモデルの開発に成功し、脊髄におけるマイクログリアの増生を確認したが、今年度は本動物モデルのより詳細な評価を行った。 神経障害性痛の症状を臨床的に改善する方法として、近年運動療法が注目されている。そこで、今年度は坐骨神経クリップ障害による運動機能の変化を観察した。評価法としては、坐骨神経の運動機能を評価する方法として一般的に行われている、sciatc function indexを手術後28日目まで観察した。坐骨神経クリップ群では術後1日から2週間後までの期間において、偽手術群と比較して有意な運動機能低下を示し、術後21日には偽手術群と同程度に回復した。また、クリップ障害部位局における免疫組織学的変化として、手術1週間後においてニューロフィラメントおよびミエリン塩基性タンパクの発現が低下しており、軸索障害および脱髄が起こっていることを示唆した。また、後根神経節で神経細胞におけるATF-3の発現率が有意に上昇しており、上記を支持する結果であった。
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