本研究期間において「ICU-AWの増悪因子がカテコラミンである」との仮説を、In vitroにおいてC2C12(マウス筋芽細胞)敗血症モデルに対し、生化学的アプローチを用いて検証した。結果、リポポリサッカライドはAtrogin-1を誘導することで近筋萎縮を誘導するが、これらの応答はカテコラミンによって増強され筋萎縮を増悪させることが判明した。カテコラミンはIL-6-STAT3経路のβアドレナリン受容体を活性化することで、LPSによって誘導されるNF-κB-C/EBPδ-atrogin-1経路の活性化を増強していることが明らかとなった。さらに、非選択的βアドレナリン受容体拮抗薬であるカルベジロールは、これら筋萎縮因子の発現量を低下させ、筋萎縮を減弱させることが判明した。 本研究結果は学術論文として報告されるとともに、「β遮断薬がICU-AWの治療もしくは予防オプションとして有用かもしれない」という臨床的に大きな意義を持つ仮説を示唆する結果となり、大きな波及効果が望まれる。
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