研究課題/領域番号 |
17K16730
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川本 修司 京都大学, 医学研究科, 助教 (80766668)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 血小板 / 糖尿病 / デクスメデトミジン / プロポフォール / P-selectin / 集中治療室 |
研究実績の概要 |
①日本集中治療医学会雑誌への発表:ヒト血小板由来マイクロパーティクル(PMP) はプロコアグラント活性と強力な炎症促進作用を有する重要な機能粒子であり、止血作用だけでなく血栓症の病因となる動脈硬化病変の形成にも関連していることが報告されているが、デクスメデトミジン(DEX)等の鎮静薬がPMPに与える影響は不明である。今回、フローサイトメトリーを用いてPMP産生に対するDEXの作用を検討した。結果、DEXがin vitroにおいてα2アドレナリン受容体を介してPMP産生を増加させることを初めて示した。その結果はDEXがα2アドレナリン受容体を介して血小板機能亢進作用を有するというこれまでの我々の研究結果を補うものである。 ②2018/6 欧州麻酔科学会(コペンハーゲン)での発表:予定開腹術を受けた非糖尿病成人患者を対象とし、術後ICU入室後採血しPRP(血小板多血漿)を作製した。PRPにDEXまたはプロポフォール(PRO)を添加した後、ADP10 μMで刺激を行い、フローサイトメトリーを用いてP-selectinの発現を測定した。結果、術後ICUに入室した患者において、DEXは濃度依存性に血小板P-selectin発現を亢進させる一方、PROは低濃度でのみ血小板P-selectin発現を亢進させた。 ③経過報告:上記結果に基づき、今度は胸腔鏡補助下食道亜全摘術をうける非糖尿病患者および糖尿病患者を対象とし、麻酔導入後と術後ICU入室時に採血し、同様にDEXまたはPROを添加してP-selectin発現を測定した。症例数が十分とはいえないが、糖尿病患者では術前からP-selectin発現量が非糖尿病患者より高く、術後はDEXによる血小板P-selectin発現亢進作用が非糖尿病患者より強く現れる傾向を認めた。さらに症例を蓄積していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
胸腔鏡補助下食道亜全摘術を受け、術後ICUへ入室する糖尿病および非糖尿患者を対象として症例を蓄積してきた。しかしながら、途中から昨今普及し始めたロボット(ダヴィンチ)支援下手術に術式が変更される場合が多く、これまでのデータと一貫性を持たせるためには症例を新たに集め直す必要に迫られ、遅れを生じた。さらに糖尿病を合併している食道癌症例がこれまでわずか2例であり、予想以上に少なかった。また、食道切除術は非常に長時間手術であり、術後ICUへ入室するのは日をまたぐことも多く認める。サンプルを確保するのに非常に時間と労力が必要なことも理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
胸腔鏡補助下食道亜全摘術を受け、術後ICUへ入室する糖尿病および非糖尿患者を対象とした症例の蓄積は継続しつつ、比較的短時間で終了し術後ICUへ入室する肝切除術と膵切除術も対象に含めることで症例を早く確保していくことができると考える。さらに実際に術後ICU入室した糖尿病患者または非糖尿病にDEXまたはPROにより鎮静を行い、vivoでの血小板機能変化も測定していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象症例が術式変更に伴い当初の予定より集めるのに時間を要し、次年度まで延長することとなったため。 具体的には、ICUに入室する食道癌患者に対する食道切除術を対象としていたが、胸腔鏡補助下食道切除術の多くが、ロボット支援下(ダビンチ)食道切除術に変更になったことが挙げられる。新しいロボットを用いた食道切除術は始まって間もない術式であり、朝から日付をまたぐことも多々あったため、時間、労力的にサンプルの回収が難しかった。次年度からは対象症例を広げ、多くのサンプルを回収できるようにする予定である。
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