研究実績の概要 |
悪性高熱症の原因遺伝子としてリアノジン受容体(RYR1)やジヒドロピリジン受容体(CACNA1S)が挙げられるが,悪性高熱症素因者のうちRYR1に遺伝子変異が見つかる症例は約70%程度(1)で,CACNA1Sに遺伝子変異が見つかる症例は約1%程度(2)である.残りの30%前後の症例では原因遺伝子は現状では分からないが,これまでに発表されていない新規の遺伝子がまだいくつかあり,発症に寄与していると思われる.そこで,今回,悪性高熱症素因を持つ可能性の高い患者(悪性高熱症の発症者,家族,類縁疾患の患者)の血液等からDNAを抽出し,RYR1とCACNA1Sに変異を持つか次世代シークエンサーを用いてスクリーニングを行い,既知の変異を持たず,新規の遺伝子変異を持つ可能性が高いと思われるサンプルについてexome sequenceを施行し新規の遺伝子変異の探索を行った. 参考文献 1.Ibarra M CA. Malignant hyperthermia in Japan: mutation screening of the entire ryanodine receptor type 1 gene coding region by direct sequencing. Anesthesiology. 2006 Jun; 104(6):1146-54. 2.Stewart SL. Identification of the Arg1086His mutation in the alpha subunit of the voltage-dependent calcium channel (CACNA1S) in a North American family with malignant hyperthermia. Clin Genet. 2001 Mar; 59(3):178-84. これまでに,143サンプルについてDNAを抽出してスクリーニングを行い,RYR1とCACNA1Sに16種類の既知の変異(RYR1T84M,Q155K,R163C,G341R,R533H,R614L,P1592L,V2280I,R2336H,S2345R,P2366R,R2508C,R2508H,L4838V,I4898T,CACNA1SR174W)や,17種類の新規の原因遺伝子の可能性のある変異(RYR1:D167G,E176D,R367Q,S604P,S2345T,I2358T,R2454G,R2625C,E3104K,N3913D,K4477N,A5025G,38990285_38990287delGGA,CACNA1S:D1382V,F1161L,S879P,A560T)を認めた.
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