研究課題
これまでに、末梢神経傷害時における脊髄後角でのマイクログリアの活性化が、神経因性疼痛に関与することが明らかになっている。我々の研究では、脊髄後角のみならず、脊髄前角においてもマイクログリアの活性化が認められることを見出した。脊髄前角におけるマイクログリアの活性化は、運動神経の周囲を取り囲みむような活性化をしており、Synaptic strippingと言われる現象が認められる。そこで、我々は脊髄前角と後角でのマイクログリアの性質の差異に注目し、本研究を行った。マクロファージ/マイクログリアの活性化マーカー、貪食に関するマーカー、マイクログリアのタイプを区別するマーカー(M1、M2マーカー神経保護因子や傷害因子)、神経やミエリンに関連するタンパクのmRNAなどを、脊髄の傷害側・健常側でそれぞれ前角・後角に分割し、4か所での発現の違いを解析した。その結果、M1マーカーの一つであるArginase1のmRNAが脊髄前角で有意に増加しており、Myelin basic protein(MBP)は脊髄後角で有意に減少していた。また、マイクログリアの活性化は傷害側前角よりも後角で強く、貪食能も後角の方が有意に高かった。Western Blotttingによる実験では、傷害側前角よりも後角でMBPの有意な減少を認めた。これらのことから、傷害側前角ではマイクログリアはより神経保護的な活性化をし、傷害側後角においてはより炎症の惹起および貪食に傾いている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
おおむね予定通りのデータが得られており、順調に進んでいる。国際雑誌への投稿のため、論文にまとめ始めたところである。
傷害側後角でのマイクログリアによるMBPの貪食をImmunohistochemistryなどの方法により捉える。また、前角でのマイクログリアの貪食のターゲットは何か、引き続き検索を行う。同時に前角で神経保護的な働きがある可能性を考え、前角での神経保護因子の産生状況などの検索を行っていく予定である。
次年度に、試薬等の購入に使用する予定である。
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