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2017 年度 実施状況報告書

肺胞細胞における遠隔虚血プレコンディショニングのメカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 17K16741
研究機関琉球大学

研究代表者

和泉 俊輔  琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (90649401)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワードプレコンディショニング / ブラジキニン / 肺胞細胞 / 臓器保護 / シグナル伝達
研究実績の概要

本研究の目的は肺胞細胞における遠隔虚血プレコンディショニングのメカニズムにブラジキニン(BK)が関与していることを分子生物学的に解明することを目的とし、新たな肺保護の臨床応用を目指している。
我々の研究室では、これまでに培養肺胞上皮細胞であるA549細胞を用いて、Toll-like receptor 5(TLR5)の刺激や過酸化水素処理によりMAPキナーゼが活性化され、上皮成長因子(EGF)受容体の1047番目のセリン残基(Ser1047)がリン酸化されることを明らかにした。さらに、TLR5刺激ではSer1047のリン酸化によりEGF受容体のエンドサイトーシスが起こることを報告した。またDNAマイクロアレイにより、A549細胞には、BK受容体が存在することを見いだした。
また四肢の短時間の虚血を数回行うという簡便な方法で、遠隔臓器の虚血侵襲に対する保護効果が得られるという遠隔虚血プレコンディショニングが報告されている。心臓や腎臓での報告があるがその機序に関して不明な点が多い。BKやアデノシンが心筋に対する虚血プレコンディショニング効果に関与していることが報告されている。
今回、BK受容体刺激後の肺胞細胞の細胞内情報伝達機構を解明し、肺胞細胞の機能に及ぼす影響と虚血プレコンディショニングへの関与について検討していく。
本研究は肺胞細胞以外の多くの細胞においてのBK受容体刺激後の細胞内情報伝達機構を解明する上でも有用な知見を提供するものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成29年度までに以下の3つの研究成果が得られた。
1.BK処理により、MAPキナーゼの中のERKとp38MAPキナーゼが活性化された。ルシフェラーゼアッセイ法からはERKがより強く活性化されることが示唆された。BK処理により、Ser1047のリン酸化が3分で認められた。このリン酸化は、ERKの阻害薬により、強く抑制された。
2.BK受容体の中のB2受容体刺激がSer1047のリン酸化に関与することが明らかになった。一方、過酸化水素処理とは異なりTyr1173はリン酸化されず、BK処理では、EGF受容体は活性化されないことが示唆された。
3.DNAマイクロアレイでは、検討した41,628遺伝子中の1,152遺伝子の発現がBK処理により変化した。変化した遺伝子の中のDUSP5についてさらに検討し、mRNAがBK処理により4倍以上増加することが確認された。DUSP5はERKを脱リン酸化して不活性化する酵素であり、ERKの負のフィードバック機構が存在することが示唆された。

今後の研究の推進方策

今後は以下の2つの内容について検討していく予定である。
1.BK受容体刺激によってERKを介してEGF受容体のSer1047がリン酸化されることを見いだした。このリン酸化はEGFRのエンドサイトーシスに関与すると考えており、今後は細胞の免疫染色やフローサイトメトリーなどを用いて検討する。
2.BK受容体刺激による細胞の移動能や生存活性の変化をwound healing assayなどを用いて検討する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Phosphorylation of epidermal growth factor receptor at serine 1047 in cultured lung alveolar epithelial cells by bradykinin B2 receptor stimulation2018

    • 著者名/発表者名
      Izumi Shunsuke、Higa-Nakamine Sayomi、Nishi Hiroyuki、Torihara Hidetsugu、Uehara Ayako、Sugahara Kazuhiro、Kakinohana Manabu、Yamamoto Hideyuki
    • 雑誌名

      Pulmonary Pharmacology & Therapeutics

      巻: 48 ページ: 53~61

    • DOI

      10.1016/j.pupt.2017.09.002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Clinical Utility of Intraoperative Motor-Evoked Potential Monitoring to Prevent Postoperative Spinal Cord Injury in Thoracic and Thoracoabdominal Aneurysm Repair2018

    • 著者名/発表者名
      Yoshitani K, Masui K, Kawaguchi M, Kawamata M, Kakinohana M, Kato S, Hasuwa K, Yamakage M,Yoshikawa Y,Nishiwaki K,Aoyama T,Inagaki Y,Yamasaki K,Matsumoto M, Ishida K, Yamashita A, Seo K, Kakumoto S, Hayashi H, Tanaka Y, Tanaka S, Ishida T, Uchino H, Kakinuma T, Yamada Y, Mori Y, Izumi S, Nishimura K, Nakai M, Ohnishi Y
    • 雑誌名

      Anesthesia & Analgesia

      巻: 126 ページ: 763~768

    • DOI

      10.1213/ANE.0000000000002749

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 経カテーテル大動脈弁留置術後,一時的に完全房室ブロックとなった症例2018

    • 著者名/発表者名
      西 啓亨、和泉 俊輔、垣花 学
    • 雑誌名

      麻酔

      巻: 67 ページ: 162~164

    • 査読あり
  • [学会発表] Gタンパク質共役受容体刺激による上皮成長因子受容体の1047番目のセリン残基のリン酸化反応2017

    • 著者名/発表者名
      和泉俊輔、仲嶺(比嘉)三代美、西啓亨、鳥原英嗣、上原綾子、須加原一博、垣花学、山本秀幸
    • 学会等名
      2017年度生命科学系学会合同年次大会
  • [学会発表] 経カテーテル大動脈弁留置術でのRapid ventricular pacing 後のINVOSとBISの変化2017

    • 著者名/発表者名
      和泉俊輔、兼村大介、渡邉洋平、西啓亨、垣花学
    • 学会等名
      第28回日本臨床モニター学会総会
  • [学会発表] 偶発的脊髄くも膜下麻酔による一過性の痙性麻痺2017

    • 著者名/発表者名
      和泉俊輔、中村清哉、高橋和成、上川務恵、垣花学
    • 学会等名
      日本区域麻酔学会第4回学術集会

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公開日: 2018-12-17  

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