研究実績の概要 |
デクスメデトミジン(DEX)は虚血再灌流障害(IRI)に対して心保護効果を発揮するが,詳細な機序は未知である.本研究では,ラットの心臓を用いて,DEX投与により発現変動するmRNA,マイクロRNA(miRNA)を網羅的に解析し,バイオインフォマティクス解析を用いてDEXのIRIに対する心保護効果の機序となる遺伝子やパスウェイの候補を提唱する. DEX投与によるラット左室心筋での遺伝子発現変動をmRNA,miRNAそれぞれでマイクロアレイ解析を行うことにより検証した.DEX投与により,165個のmRNA (発現増加: 14, 発現低下: 151) と,6個のmiRNA (発現増加: 3, 発現低下: 3) の発現変化が観察された.発現増加したmiRNAに対するターゲット遺伝子として19の遺伝子が,発現低下したmiRNAに対するターゲット遺伝子として1つの遺伝子が選出された. 発現増加したmRNAでは,リボソーム機能に関するGOが検出され,KEGGパスウェイではRibosomeのみが有意に検出された.一方で,発現低下したmRNAにおいては,タンパク質のリン酸化やプロテインキナーゼの活性化,セリンスレオニンキナーゼの活性化,MAPKフォスファターゼの活性化など,多種のGOが検出され,KEGGパスウェイにおいては,心保護に関すると報告されているp53 signaling pathwayが検出された.発現増加したmiRNAに対するターゲット遺伝子における解析では,細胞死やプロテインキナーゼの活性化に関するGOが検出されたが,KEGGパスウェイにおいては有意なパスウェイは検出されなかった.発現低下したmiRNAのターゲト遺伝子は1つのみであったので,さらなる解析は行わなかった. 本研究により,DEXによる心保護効果の機序の候補として,いくつかの遺伝子やパスウェイが同定された.
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