高齢者の手術件数増加に伴い、術後せん妄への対応は医療経済的にも患者の予後的にも喫緊の課題である。しかしながら、術後せん妄の予測法や予防する麻酔法・鎮静法については明らかになっていない。本研究では、概日リズムの変調がせん妄の神経基盤となっていると仮説を立る。青色光で惹起される対光反射が概日リズム機能を反映することに注目し、青色光対光反射の定量評価による術後せん妄の評価法と予測法を確立する。さらに、各種麻酔薬・鎮静薬の青色光対光反射に対する影響を検討し、術後せん妄の予防法を確立することを目的とする。平成29年度に引き続き「術後患者での青色刺激光による対光反射機能とせん妄に関する前向き観察研究」を継続した。ASAⅠまたはⅡで、待機整形外科手術を受ける65歳以上の患者を対象とする。術前に青色刺激光に対する対光反射検査を行い両眼ともに対光反射が認められなかった患者、術中に人工心肺を装着する患者、精神疾患合併患者、脳機能障害患者は除外する。手術室入室後、標準的モニター装着し、静脈路確保する。麻酔法は担当麻酔科医に一任する。対光反射測定は、麻酔導入前、手術終了麻酔覚醒前、麻酔覚醒後手術室退室直前、手術退室2時間後(術後0日目)、および術後第1日目から5日目まで毎朝夕に行う。せん妄評価は手術室入室前、手術退室2時間後(術後0日目)、および術後第1日目から5日目まで毎朝夕に行う。術後せん妄のほとんどが術後5日目までに発生するため、観察期間は術後5日目までとする。現在、症例を蓄積している。
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