研究課題
【背景】セボフルランは虚血プレコンディショニング効果を持ち、その作用機序としてATP感受性Kチャネル(以下KATPチャネル)が重要な役割を担っている。今回、マウス脳スライスを用いて再灌流障害の一因である虚血誘導性の興奮性シナプス後電位(以下EPSP)増大に対するセボフルランのKATPチャネルを介した効果を検討した。またエネルギー枯渇時、ニューロンはグリアから供給された乳酸をエネルギー源として使用する。乳酸の細胞膜電位やEPSPへの影響も検討した。【方法】B6Jマウス脳スライスを作製し、ホールセルパッチクランプ法を用いて線条体medium sized spiny neuronから細胞膜電位やEPSPを計測した。酸素グルコース欠乏環境はスクロース外液に窒素を併用し作製した。KATPチャネル阻害薬としてグリベンクラミド、乳酸輸送体であるモノカルボン酸トランスポーターの阻害薬として4-CINを使用した。【結果】3分間の酸素グルコース欠乏環境後、セボフルラン非投与群ではEPSPが増大した。一方、セボフルラン4%を15分間投与した群では非投与群と比較するとEPSP増大が有意に抑制された。セボフルラン群にグリベンクラミドを投与した所、その効果は消失した。4-CIN群では酸素グルコース欠乏環境においてニューロンが脱分極するまでの時間を早めた。さらに4-CIN群は酸素グルコース欠乏環境でないにもかかわらずEPSPを増大させたが、セボフルランはその増大を抑制しなかった。【結論】セボフルランは虚血誘導性EPSP増大を抑制し、グリベンクラミドはその作用を消失させた。これはセボフルランがKATPチャネルを介して再灌流障害を軽減し中枢神経保護効果を持つ可能性を示唆している。また乳酸は細胞膜電位維持に寄与しEPSPにも影響を与えるが、セボフルランとの関係については更なる検討が必要である。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究計画は遂行できており、本プロジェクトにおける最初の論文を投稿する段階にある。
中枢神経の虚血に対する吸入麻酔薬や硫化水素の作用についてモデルマウスを用いて更に検討を進める。
昨年度は高価な試薬などの使用頻度が低かったが次年度は確実に増えることが見込まれる。
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