研究課題/領域番号 |
17K16755
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
菅澤 佑介 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (80459114)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 虚血 / ATP感受性Kチャネル / 再灌流障害 / 吸入麻酔薬 |
研究実績の概要 |
【背景】脳は虚血・低酸素後に灌流により再灌流障害が生じ細胞死に至る。セボフルランは臓器保護作用のあるプレコンディショニング効果を持ちその作用機序としてATP感受性K+チャネルが重要な役割を担っている。今回、マウス脳スライスを用いて再灌流障害の一因である低酸素誘導性の興奮性シナプス後電位増大に対するセボフルランのKATPチャネルを介した効果を検討した。また、ニューロンはエネルギー枯渇時、グリアから供給された乳酸をエネルギー源として使用する。乳酸の細胞膜電位やEPSPへの影響も併せて検討した。 【方法】B6Jマウス脳スライスを作製しホールセルパッチクランプ法を用いて線条体 MS neuronから細胞膜電位やEPSPを計測した。酸素グルコース欠乏環境はスクロース外液に窒素を併用し作製した。KATPチャネル阻害薬としてグリベンクラミド、乳酸輸送体であるモノカルボン酸トランスポーターの阻害薬として4CINを使用した。 【結果】3分間の酸素グルコース欠乏後、セボフルラン非投与群ではEPSPが増大した。一方、セボフルラン4%を15分間投与した群では非投与群と比較しEPSP増大が有意に抑制された。セボフルラン群にグリベンクラミドを投与するとその効果は消失した。4CIN群では酸素グルコース欠乏環境においてニューロンが脱分極するまでの時間を早めた。さらに4CIN群は酸素およびグルコースの存在下においてもEPSPを増大させたが、セボフルランはその増大を抑制しなかった。 【結論】セボフルランは低酸素誘導性EPSP増大を抑制しグリベンクラミドはその作用を消失させた。セボフルランはKATPチャネルを介した脳保護効果を持つ可能性がある。セボフルランが4CIN群において酸素・グルコース存在下でもEPSP増大を抑制しなかったことからセボフルランの効果にモノカルボン酸トランスポーターの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は遂行できており、本プロジェクトの学会発表・論文投稿を完了し、Minor revisionの段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
中枢神経虚血に対する吸入麻酔薬・硫化水素の作用、およびATP感受性Kチャネルの関与についてモデルマウスを用いて更に検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は高価な試薬やモデルマウスの使用頻度が低かったが次年度は確実に増えることが見込まれる。
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