研究実績の概要 |
本研究では,敗血症関連脳症(sepsis-associated encephalopathy; SAE)の脳障害発症機序として活性酸素種(Reactive Oxygen Species; ROS)を起因としたMPTP(Mitochondrial Permeability Transition pore)に伴う脳ミトコンドリア機能不全に焦点を置き,SAEの実態をROSにより活性化されるBcl family とMPTPを制御するミトコンドリアpeptidyl prolyl isomerase(Ppi)のCyclophilin Dを機軸とした情報伝達系の連関解析を目的とした。第7-8週齢の雄性C57BL/6マウス(WTマウス)とCyclophilin D遺伝子欠損(Ppif-/-)マウス(KOマウス)を用いて盲腸結紮穿孔法によるSAEモデルを作成し,死亡率を比較したところ,KOマウスの死亡率が有意に低かった。SAEモデル作製3,6,18時間後の大脳サンプリングを用いてRT-PCRとwestern blot で炎症性サイトカインの発現を比較したが、有意な結果は得られなかった。Celestine blue and acid fuchsin染色による神経細胞死を比較したところ、SAE作成18時間後のKOマウスはWTマウスに比べて神経細胞死が有意に低下していた。またSAEモデル作製3,6,18時間後の大脳のサンプリングからミトコンドリア分画を抽出したのちOROBOROS Oxygraph-2kにてミトコンドリア呼吸鎖の機能を測定したが,complexⅠ~Ⅳに有意差はなかった。KOマウスでは死亡率の低下や神経細胞死の減少がみられたが,炎症性サイトカインの発現やミトコンドリア呼吸鎖機能に有意差は認められず、SAEの発生機序としてCyclophilin Dが関わるか明らかにならなかった。
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