研究実績の概要 |
疼痛は腰痛や関節リウマチあるいは手術後の痛みなどに代表されるように罹患者数の極めて多い症状であるが、その作用機構についてはいまだ未解明の点が多い。本研究は、ES細胞から神経細胞へと分化誘導をした細胞群から知覚神経細胞になりうる細胞のみを選び出すことにより、知覚神経細胞を効率よく培養し、疼痛の起こる仕組みを研究するための土台を作り上げることを目指すものである。 我々は次世代シークエンスによる解析から、ES細胞から神経細胞への分化誘導の過程でNeurogenin1とNeurogenin2の発現が一過的に上昇することを確認している。 また、Neurogenin1はNeurogenin2よりも知覚神経細胞の分化決定に深く関与しているという報告もある。そこで、Neurogenin1の発現を損なうことなく、Neurogenin1遺伝子の発現を蛍光タンパクで確認できるようにするため、ゲノム中のNeurogenin1遺伝子の3’側にP2Aペプチドとそれに続くeGFPの遺伝子配列をノックインすることを行った。このノックインにはゲノム編集技術であるCRISPR/CAS9を使用した。そのため、オールインワン型のCRISPR/CAS9ベクターにNeurogenin1の遺伝子座近傍を切断標的とするガイドRNAの配列を組み込み、CRISPR/CAS9ベクターを構築した。この時のガイドRNAの決定には、複数のウェブデータベース(CRISPRdirect, CRISPORなど)を利用し、切断効率が高くオフターゲット効果が低いものを複数選んだ。それぞれのガイドRNAの切断活性はSSAアッセイにより確認した。ターゲティングベクターにNeurogenin1, P2A, eGFPの3配列をつなげて組み込み、ターゲティングベクターとCRISPR/CAS9ベクターをエレクトロポレーションによってES細胞に導入して、ゲノム編集を行った。薬剤による選別とPCRによる選択を経て、Neurogenin1の3’側にeGFPを組み込んだES細胞を作成した。このノックインES細胞を使用して神経細胞への分化誘導を行った所、eGFPの蛍光は確認されなかった。
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