昨年度にはNeurogenin1遺伝子の3'側にP2A配列とeGFPを組み込んだES細胞から神経細胞を分化誘導し、Neurogenin1遺伝子の遺伝子発現をeGFPの蛍光で可視化することを試みた。しかしeGFPの蛍光は確認されなかった。そこで本年度ではNeurogenin1と同様に知覚神経細胞分化に必要であるNeurogenin2に着目し、この遺伝子発現をeGFPで可視化する事を計画した。次世代シークエンスによる解析ではNeurogenin2は神経細胞分化誘導の開始8日目からその発現量が上昇しはじめ、10日目にピークとなり、その後急速に発現が低下することが強く示唆されていた。最初に定量PCRによって発現量の推移を調べ、次世代シークエンスと同様の結果を得、この発現変化パターンが正しいことを確認した。次に、Neurogenin1のときと同じく、CRISPR/CAS9のゲノム編集技術を使用して、P2Aペプチドの遺伝子配列とeGFPの配列を、ES細胞のゲノム中のNeurogenin2遺伝子の3'側へのノックインを行った。組み込んだES細胞は、薬剤による選別とゲノムPCRにより選択し、さらにシークエンスにより、狙ったゲノム領域に正確に組み込まれていることを確認した。ノックインES細胞から神経細胞を分化誘導させたところ、Neurogenin2の発現とeGFP遺伝子の発現を定量PCRによって確認した。その発現変化は、ノックイン前のES細胞と同様であった。また、eGFP抗体によって染色される細胞を確認した。次に、FACSによってeGFP陽性細胞と陰性細胞の2つの集団を検出した。以上のことから、作成したES細胞を使用して、知覚神経細胞の誘導系の作成と、知覚神経細胞を効率よく培養することが可能な技術の確立を目指していく。
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