研究実績の概要 |
神経障害性痛のため日常生活に支障をきたしている人は少なくなく, 新しい治療法の開発が強く望まれている。神経障害性痛は, 侵害受容ニューロンの損傷に よって複数の神経系に多様な可塑化が惹起されるため, 一旦病態が進行し完成されると既存の治療に抵抗を示し, 治療が困難となる。以前我々は, アクロメリン 酸 A を用いて神経障害性痛を惹起したマウスの神経障害 1 時間後と 1 週間後を比較することで, 神経障害性痛の発現と維持の機序が異なっていることを明ら かにした (Omoto H et al. Eur J Pharmacol. 760: 42-8, 2015)。これは, 既存の治療法が初期の病態には著効するが完成された病態には抵抗を示すことの裏づ けとなった。 近年, 神経損傷後に産生されるフリーラジカルが神経障害性痛の初期の病態に関与していることが明らかとなった (Nagata K et al. Jpn J Pharmacol. 90: 361-4, 2010)。フリーラジカルが損傷したニューロンの脱髄を惹き起こし, エファプスが形成されることにより疼痛閾値の低下や異常感覚を惹き起こす。痛みにより産生されたフリーラジカルがさらなる病態の悪化にも関与している可能性があり, フリーラジカルを抑制すれば神経障害性痛を発現と維持のどちらの段階でも抑制できる可能性がある。 今回, 神経結紮により神経障害性痛を発現させたマウスに, 神経損傷前, 神経損傷直後, 神経損傷後症状が固定された後の各段階で抗酸化作用を有する薬剤を投与することにより, 抗酸化物質が神経障害性痛を改善する可能性について検討を行った。
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