研究課題/領域番号 |
17K16766
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
北浦 淳寛 近畿大学, 医学部, 助教 (20716485)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 糖化最終産物 / マクロファージ / 炎症 / 血管新生 / 敗血症 |
研究実績の概要 |
糖尿病患者において、周術期血糖管理では十分な術後予後改善効果が得られない。そこで、我々は慢性的な病因に対するアプローチが必要と考え、糖尿病合併症の原因として注目されているが、その作用機序が未だ十分に解明されていないadvanced glycation end-product (以下AGEs)に着目した。我々のこれまでの研究結果を踏まえ、「AGEs はマクロファージのM2 polarization を阻害し、創傷治癒機転を遷延させて、術後臓器障害を誘導する」という仮説を立て、本年度は①AGEs によるマクロファージのM1/M2 誘導、②M1/M2 マクロファージと血管新生について検討し、③AGEs の血管新生への影響についての検討を開始した。
これまでに、我々はマウス由来単球細胞のRAW264.7細胞を用いて、M1/M2刺激によりマクロファージの血管新生への作用がM1刺激で促進・M2刺激で抑制と双方に傾きうることを確認したうえで、AGEsがマクロファージの性質にどのような影響を与えるのかを、表面抗原・受容体の発現およびマウス由来血管内皮細胞のb.End5細胞との共培養によるin vitro matrigel tube formation assayを用いた血管新生作用の検討によって解析した。そのなかで、表面抗原の1つであるCD204がAGEsによって発現増加することがわかった。AGEsの血管新生への影響については現在研究継続中である。さらにこれらの研究過程で、AGEsはマクロファージによって貪食されることを画像的に明らかにし、このマクロファージのAGEs貪食にCD204が関与していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・申請時の実験計画に対するこれまでの研究成果の到達度: ①AGEs によるマクロファージのM1/M2 誘導(到達率:100%):AGEs刺激によるマウス由来マクロファージ細胞(RAW264.7)の表面抗原発現の変化についての検討は完了した。②M1/M2 マクロファージと血管新生(到達率:100%):Th1サイトカインのTNF-αまたはTh2サイトカインのIL-10等を用い、M1/M2型マクロファージへの分化誘導評価系を確立することに成功し、内皮細胞との共培養マトリゲルアッセイを用いて血管新生について検討し、その作用を確認した。平成29年度内に開始し平成30年度中の完了を予定している③AGEsの血管新生への影響(達成度:50%)は平成29年度より開始できており、現在遂行中である。平成30年度開始予定の④AGEs 受容体の関与(達成度:50%)については、すでにRAW264.7表面の受容体発現増加については確認ができており、中和抗体によりAGEsの関与するレセプターについて検討を行った。その中で、CD204が重要な役割を果たしていることを確認した。さらに、AGEs刺激によるマクロファージの機能的な変化を確認するため、血管新生に加えて、AGEsの貪食作用についても検討項目に追加とした。さらに、TLR4ノックダウン細胞の作製および、赤色色素を遺伝子導入したRAW264.7細胞の作製にも成功しており、今後これらの細胞を用いた研究を進めていく予定である。
これまでの研究過程で、マクロファージによるAGEsの貪食を画像的に確認することに成功し、マクロファージのAGEs貪食にCD204が関与していることが明らかにし、論文にて発表した(後頁参照)。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに確立したin vitro matrigel tube formation assay を含む実験評価系と、今後構築するマウスを用いたin vivo実験を用いて、AGEsのマクロファージを介した病態生理について明らかにしていきたい。また、AGEsと受容体を同じくする他の炎症性物質の相互作用についても検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の研究が計画より順調に進行したため、約20.000円の物品費余剰が生じた。翌年度は平成29年度と比較し、より多くの抗体等を使用する計画があり、経費が大きくなると考えられるため、翌年度助成金と合わせて有効に使用していきたいと考えている。
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