研究課題/領域番号 |
17K16767
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菅野 由岐子 北海道大学, 大学病院, 助教 (70735183)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 下部尿路閉塞 / 膀胱の線維化 / 日内リズム / ナフトピジル |
研究実績の概要 |
pBOO膀胱では、排尿筋層に残存するセロトニン収縮や、漿膜層平滑筋様細胞に起因するセロトニン収縮がみられることが予想される。 雌性C57/BL6マウスを各群n=7として3群に分けた。pBOO手術を施行せず飼料を与えたintact群、手術を施行し飼料を与えたpBOO群、手術を施行し、ナフトピジルを摂取量20mg/kg/dayとなるように混ぜた飼料を与えたpBOO+NAF群である。各群は12時間毎の明期と暗期においた。6か月後にaVSOP法にて排尿回数、1回排尿量を測定した。その後膀胱を摘出し、qRT-PCRを施行した。Ⅰ型及びⅢ型コラーゲン、5-HT2A-2Cの発現量を評価した。統計学的解析にはstudent’s t-test及びpaired t-testを用いた。 intact群に比べ、pBOO群では体重増加の傾向があり、pBOO群とpBOO+NAF群では有意差はなかった。膀胱重量は、pBOO群、pBOO+NAF群にてintact群に比べ著明に大きかった。排尿回数には有意差は見られなかったが、pBOO群にてintact群に比べ明期の平均排尿回数が増加し、明期の平均1回排尿量が減少した。また、pBOO+NAF群では、明期の排尿回数がpBOO群に比べて著明に減少した。Ⅰ型及び型コラーゲン、5-HT2AのmRNA発現量はpBOO群にてintact群よりも著明に減少した。pBOO+NAF群において、5-HT2Aの発現量はpBOO群に比べ著明に減少した。 マウスの明期はヒトの夜間に相当する。本研究では、pBOO状態においての明期の排尿回数増加、1回排尿量減少があり、pBOO状態は排尿の日内リズムを障害した。また、pBOOでの5-HT2Aの発現上昇がみられたが、ナフトピジルの長期投与にて抑制された。ナフトピジルはpBOO膀胱において、セロトニン受容体発現と線維化の過程に関与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既にmRNA発現量の測定や代謝ケージでの観察等は完了できているが、研究者自身の妊娠、出産による休暇で研究が中断されているため、次年度使用額が生じている。平成31年6月より復帰予定であり、大幅な遅れは見込まれないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織学的評価はまだ行えておらず、膀胱頂部および体部から連続するパラフィン薄切切片を標本とし、脱パラフィン処理後、平滑筋細胞、筋線維芽細胞、炎症性細胞、神経繊維などの免疫染色を行う。対比として核染色を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者自身の妊娠、出産による休暇のため研究の中断があり、次年度使用額が生じた。 次年度の使用計画として、 pBOO膀胱の線維化の過程について考察を深めるべく、線維化に関するメディエーターである、tissue inhibitors metalloprotease (TIMP)1 and 2, matrixmetalloprotease (MMP)2及び9および、炎症性サイトカインであるIL-1bの発現量についても、今後評価を行い、線維化の過程と局所炎症の発症との関連についても検討する。
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