研究実績の概要 |
膀胱癌(UCB, 177例)、上部尿路上皮癌(UTUC, 60例)および前立腺癌(PC, 96例)患者の血清、および岩木町住民検診より採取された健常人(339例)の血清のイムノグロブリン (Ig)分画を精製し、質量分析法によるN-glycomicsにより、血清Ig由来32種のN-glycanプロファイルを同定した。判別分析によりUC検出に関連する5種のN-glycan 濃度と判別分析により得られた判別関数を乗算し、積算したスコアをdiagnostic N-glycan score(dNGScore)とした。dNGScoreによるUCの診断に関するROC解析からUCの診断精度(AUC 0.969)は、既存検査を遥かに凌駕した。5種のN-glycanがUCの検出に関連する糖鎖として選択された。5種のN-glycanの血中濃度と合成経路の関係から、特にasialo bisecting N-glycan(m/z 2118)および(m/z 2118)、monosialyl bisecting N-glycan (m/z 2423)糖鎖修飾血清IgがUCB患者で蓄積することが明らかとなった。さらにUTUCでは、asialo bisecting N-glycan(m/z 2118)が顕著に蓄積し、UCBとUTUCのイムノグロブリンN-glycanプロファイルが少し異なることが明らかとなった。 質量分析法では、臨床応用が難しいため、上部尿路上皮癌患者と健常者の血清を用いてGlyQキャピラリー電気泳動装置による迅速糖鎖解析装置による解析を試みた。その結果、質量分析法と同様の糖鎖変異産物の合成経路に関連する糖鎖群の網羅的解析が可能であった。これらの成果から、今後、GlyQキャピラリー電気泳動法による迅速糖鎖解析法を用いて臨床応用を検討している。
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