研究課題/領域番号 |
17K16775
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池田 篤史 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (50789146)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人工知能 / 深層学習 / 膀胱癌 |
研究実績の概要 |
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)における膀胱内再発の機序は、腫瘍細胞の播種や前がん病変の広がり、微小な播種病巣(娘腫瘍)の見落としとされる。狭帯域光観察(NBI)や光力学診断(PDD)などの膀胱癌を見やすくする内視鏡技術が開発されてきたが、医師の知識や経験の差によりその診断と治療の精度にばらつきが生じている。我々はこれまで、人工知能の深層学習に基づいた異常検出手法を用いて膀胱内視鏡画像の客観的評価を行ってきた。これまでの研究では、膀胱内視鏡画像から腫瘍病変の映る400×300ピクセルの領域を切り出した画像を用いたものであった。本発表では、実際の膀胱内視鏡画像に適用できるように拡張し、腫瘍病変の種類(隆起性、平坦など)や映る場所、大きさに依存せずに検出が可能かどうかの検証を行った。筑波大学附属病院で施行された膀胱内視鏡画像(正常:1671枚、腫瘍病変:431枚)を用い、学習:テスト=8:2となるようなデータセットを作成した。アルゴリズムとして、深層学習モデルであるGoogLeNet(Inception v1)に基づいた転移学習による異常検出手法による腫瘍病変検出を行った。学習データセットで深層学習モデルを再調整するファインチューニングを行い、病変画像と正常画像の判別を行った。結果は病変画像(87枚)と正常画像(335枚)の判別に対して、ROC曲線はAUC 0.98、Youden指数0.837における感度94.0%、特異度89.7%を達成した。深層学習に基づいた転移学習による異常検出手法を用いることで、膀胱内視鏡画像全体から画像的な特徴を抽出し学習させることで、画像に映る病変の位置や大きさに依存せず、隆起性病変や平坦病変を含む病変画像と正常画像とを分類することが可能となった。膀胱内視鏡診断の支援システムにより、膀胱癌の診断と治療の質を高める可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収集した膀胱内視鏡画像も2500枚を超え、深層学習に基づいて解析や臓器間多段階転移学習を用いた解析を進めている。 研究成果の発信として、2018年11月の泌尿器内視鏡学会で演題名「深層学習に基づいた膀胱癌内視鏡画像の客観的評価手法」を発表し、総会賞(ポスター部門)を受賞した。2019年1月に第1回日本メディカルAI学会で「胃内視鏡画像を活用した段階的転移学習による膀胱内視鏡診断支援」で優秀賞を受賞、3月のEAU19(ヨーロッパ泌尿器科学会)では、演題名「Stepwise transfer learning in convolutional neural networks for the cystoscopic diagnosis of bladder cancer using gastroscopic images」がポスターセッションに採択され、ベストポスター賞のひとつに選出された。4月には第107回日本泌尿器科学会総会で演題名「深層学習に基づいた膀胱内視鏡診断支援システム」について発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
通常光(白色光)、NBI、PDDの膀胱内視鏡画像の収集をさらすに進める。 これまでの研究で人工知能によって解析した結果が、実際の泌尿器科医(後期研修医、専門医、指導医)ではどのように診断されたかを比較、分析する。 動画や膀胱内視鏡検査において、リアルタイムに膀胱内の病変を検出するシステムに拡張し、検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定のものが、在庫の関係で年度内に購入できなかったため、使用額が変更となりました。 年度が変わり次第、購入の手続き等を行う予定です。
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