研究課題
ホルモン遮断療法に対する耐性機構を獲得した去勢抵抗性前立腺癌は、しばしば骨などの臓器に遠隔転移をきたし、予後が非常に悪いのが現状である。よって、去勢抵抗性前立腺癌細胞に対してゲノム科学的手法を用いた解析を行うことは、前立腺癌遠隔転移の分子メカニズムを解明する上で重要であると考える。ヒトゲノム中には、マイクロRNAと呼ばれる19-23塩基の1本鎖低分子RNAが存在する。マイクロRNAは、タンパクをコードしないノンコーディングRNAの一種であり、標的となるメッセンジャーRNAに結合することで、翻訳阻害や直接分解などの機能を有する。マイクロRNAの特徴として、1つのマイクロRNAは複数の癌関連遺伝子によって制御され、また、1つの癌関連遺伝子は複数のマイクロRNAによって制御される。すなわち、マイクロRNAと癌関連遺伝子が複雑な分子ネットワークを形成していると考えられる。この分子ネットワークを明らかにすることで、去勢抵抗性前立腺癌の新規治療法の探索につながることが期待できる。本研究では、去勢抵抗性前立腺癌患者の剖検組織を用いて、次世代シーケンサーによるマイクロRNA発現プロファイルを作成した。そして、プロファイルの結果、去勢抵抗性前立腺癌組織において発現が抑制されているマイクロRNAに着目し、機能解析を施行し、miR-145-3p、miR-150-5p、miR-150-3pが癌抑制型マイクロRNAとして機能している事を明らかにした。マイクロRNAの生合成過程において、passenger strandは分解され、機能をもたないと考えられていたが、本結果により、guide strandとともに、passenger strandも、癌抑制型マイクロRNAとしての機能を有する事を明らかにした。
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British Journal of Cancer
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