近年開発された血管新生受容体や増殖シグナル受容体を標的とした分子標的治療薬は、進行腎細胞癌症例に対して、1st lineまたは2nd lineの治療として一定の治療効果を上げており、腎細胞癌の切除不能例や、遠隔転移を認める症例に対する治療の選択肢が増えている。しかしながら、腎細胞癌は、分子標的薬の治療経過中に治療抵抗性を獲得することが多い。治療抵抗性を獲得した腎細胞癌に対する有効な治療法は皆無であり、患者の予後は極めて不良である。本疾患の制御には、治療抵抗性を獲得した腎細胞癌における機能性RNAネットワークを探索し、治療抵抗性に関与する分子経路を遮断する戦略が不可欠であると考える。この様な背景の下、我々は、分子標的治療薬(スニチニブ)治療後の剖検検体から、「治療抵抗性腎細胞癌マイクロRNA発現プロファイル」を作成し、癌組織で発現が抑制されているマイクロRNA(癌抑制型マイクロRNA)および癌組織で発現が亢進しているマイクロRNA(癌促進型マイクロRNA)の探索を行った。発現が抑制されているマイクロRNAから、miR-149-5p、miR-149-3p、miR-10a-5p、miR-451aに着目し、これらマイクロRNAの機能解析を施行した。その結果、これらのマイクロRNAを腎細胞癌に核酸導入する事により、癌細胞の遊走能、浸潤能を顕著に抑制した。更に、これらマイクロRNAが制御する分子ネットワークを探索した結果、癌の転移に関与する遺伝子を同定した。これらのマイクロRNAが標的とする遺伝子はTCGA(the cancer genome atlas)のデータベースから腎細胞癌において予後不良因子であることが確認された。
|