研究実績の概要 |
間質性膀胱炎は、原因不明の難治性膀胱炎であり、頻尿や痛みといった症状により患者のQOLを著しく低下させるが、いまだ客観的な診断法や有効な治療法がないのが現状である。今回我々は、間質性膀胱炎の病態解明に向けて臨床検体におけるマイクロRNA発現プロファイルの作成を試みた。 麻酔下膀胱水圧拡張時に間質性膀胱炎患者から得られた生検検体を用いて、RNAシーケンシングにより網羅的なマイクロRNA発現解析を行い、その発現レベルを、すでに当研究チームで作成していた正常膀胱検体および膀胱癌検体における発現プロファイルと比較したころ、間質性膀胱炎特異的に発現異常を認める336個のマイクロRNA(203個は発現低下、163個は発現亢進)が同定された。今回は、そのうち特に発現低下が顕著であったマイクロRNA320ファミリー(miR-320a, miR-320b, miR-320c, miR-320d, miR-320e)に着目し、ゲノムワイド解析およびイン・シリコ解析を用いてその標的遺伝子の探索を行ったところ、3つの転写因子(E2F-1, E2F-2, TUB)がmiR-320ファミリーから制御を受けていることが判明した。 続いて間質性膀胱炎臨床検体において免疫染色を行ったところ、これら3つの転写因子は全て病変部において発現が亢進していた。 以上より、miR-320ファミリーが制御する分子ネットワークが間質性膀胱炎の病態に関与している可能性が示唆され、今後の新規分子マーカーや新規治療法の開発につながることが期待されると考えられた。
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