研究実績の概要 |
昨年度、間質性膀胱炎の分子レベルでの発症要因を解明するため、RNA sequencingにより間質性膀胱炎患者の膀胱粘膜検体における網羅的なマイクロRNA発現解析を行った。その結果、正常膀胱および膀胱癌組織と比較して366種のマイクロRNAが発現異常(203種が発現低下、163種が発現亢進)を示していることが分かった。 中でもmiR-320ファミリーの発現低下に着目し、ゲノムワイド遺伝子発現解析およびインシリコデータベース解析により、E2F-1, E2F-2, TUBがmiR-320ファミリーの標的遺伝子であることを突き止め、更に間質性膀胱炎の臨床検体の免疫染色を行いこれら遺伝子の発現亢進を確認した。以上より、miR-320を基点とするパスウェイの間質性膀胱炎の発症への関与が示唆され、今後の間質性膀胱炎の新たなバイオマーカーや治療法の開発につながる可能性が示された。 我々は、現在の間質性膀胱炎の確定診断が膀胱鏡の所見という主観的要素の強い項目に基づいて行われている問題点に着目し、間質性膀胱炎特異的に発現異常を示すマイクロRNAを用いた簡易的かつ明確な診断法の開発を目指している。具体的には、血液中のエクソソーム解析によりマイクロRNAの発現プロファイルを得て非間質性膀胱炎の血液と比較し何らかの発現異常を示すマイクロRNAの同定を試みる予定であり、現在、患者検体の採取に向けて鋭意準備を進めているところである。
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