進行癌である去勢抵抗性前立腺癌(Castration-Resistant Prostate Cancer;CRPC)のメカニズムとして、アンドロゲン受容体(Androgen Receptor;AR)のリガンド結合部位(Ligand-binding domain;LBD)が欠失したSplice Variants の発現増加が注目され、近年、ARのN末端に直接結合し、このSplice Variants 含めあらゆるARを阻害可能な新規薬剤が開発され(EPI-506)、北米で臨床試験が行われていた。本研究では、主にこのEPIと同等あるいはそれ以上の阻害効果が期待できる類似化合物(I-EPI)の治療効果を、動物実験をもとに比較・解析し、今後の臨床応用が可能かどうか模索した。本申請者は、カナダ留学中(BC Cancer Agency Genome Sciences Centre;2013-2016年)にEPIのヨード化により(I-EPI)、オリジナルの薬剤であるEPIと比較し、去勢抵抗性前立腺癌細胞株であるLNCaP95細胞を用いて、細胞増殖抑制効果が同等または増強する可能性をIn Vitroで以前証明した。当施設で予備実験として同様のIn Vitroの実験を行い、以前とほぼ同様の細胞増殖抑制効果を得られた。続いて動物実験の免疫不全マウスを用いてLNCaP95細胞のXenograft作成を行い、比較実験を行ったところ、I-EPIはEPIと比較し、一定の腫瘍縮小効果は認められたものの、EPIと同等の腫瘍縮小効果は認めなかった。 この基礎実験と同時に臨床研究として、抗がん剤治療(ドセタキセル治療)を行ったCRPC患者において予後を規定する臨床パラメータを模索する後ろ向き解析を行ったところ、血清テストステロン値が有意な予後規定因子であることを証明し、論文発表した。
|