研究実績の概要 |
我々はHPLCを用いて、マウス精巣でD-Aspが出生後に週齢とともに増加し、造精機能の成熟と共にプラトーに達することや、出生直後はセルトリ細胞に発現するDDO (D-Asp分解酵素)が、逆相関する形で急激に活性を失うという、特徴的な経時的変化を見いだした。 D-Aspは精細胞分化に伴い精子細胞の細胞質 (Residual body)に存在し始め、精子の成熟時にセルトリ細胞へ吸収されることを報告した。成獣マウスのセルトリ細胞では、前述のごとく分解酵素であるDDOの活性が成長と共に失われ、D-Aspはセルトリ細胞で分解されず生理的活性を失わない。 In vitro精子産生法(Sato, Nature, 2011)における培養精巣組織内で、外因性D-Aspは減数分裂開始前の精細胞分化に抑制的に作用した。(Tomita, Biol Reprod, 2016) 以上のこれまでの研究成果により、精子細胞に含まれる内因性D-Aspは、分化の進んだ精子細胞の細胞質内で合成され、セルトリ細胞へ放出された後に精巣間質のライディッヒ細胞へ作用し、テストステロン合成を亢進するものと推察した。
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