健常者3例および膀胱癌患者7名(非浸潤性膀胱癌3例、浸潤性膀胱癌4例)の尿から超遠心法を用いてエクソソームを回収した。また同癌患者のがん組織検体を培養液で培養し、その培養液を超遠心することで癌組織分泌エクソソームも回収した。上記尿中エクソソームおよび癌組織分泌エクソソームをTMT質量分析を用いてエクソソーム発現タンパクを比較した。結果として尿中エクソソームからは計1960個、癌組織分泌エクソソームからは計1538個のタンパクが検出された。この中で癌患者の尿中エクソソームで上昇(Fold-change>2.0、p<0.1)しており、かつ癌組織分泌エクソソーム内でも同定されたタンパクは55個認めた。これらのタンパクをバイオマーカー候補として、多検体で検証した。健常者30例、膀胱癌患者40例(非浸潤性20例、浸潤性20例)の尿中エクソソームを回収し、上記55タンパクをSRM質量分析法にて測定した。候補55タンパクの中で健常者の尿中で発現がなく、膀胱癌患者の尿中でした発現がなかったBCEP1(Bladder Cancer Exosomes Protein 1)は多検体の検証でも有意に膀胱癌患者の尿中で上昇しており(p<0.01)おり、また非浸潤癌と浸潤癌の間でも有意差をもって浸潤癌患者の尿中エクソソームBCEP1は尿細胞診陰性の患者でも有意に上昇していた(p<0.05)。尿中エクソソーム内BCEP1を用いた膀胱癌の診断能は感度72.5%、特異度86.7% (AUC=0.845)であった。また多変量解析を行うと、尿中エクソソーム内BCEP1は年齢、性別、尿細胞診で調整しても、膀胱癌の診断に有意であることが示された(p=0.002)。
|