研究課題/領域番号 |
17K16790
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
河嶋 厚成 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50746568)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 疲弊化T細胞 / 腎細胞癌 / 尿路上皮癌 / PD-1 / Tim-3 |
研究実績の概要 |
腎細胞癌および尿路上皮癌を始めとする泌尿器科癌では、抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体の臨床的効果が相次いで報告されている。しかし、その奏効率は30%程度にとどまることから、新たなる癌集学的治療の構築が重要な課題である。我々は、これまで腎細胞癌および尿路上皮癌局所内に浸潤する免疫担当細胞の細胞表面マーカーの発現様式に基づいた層別化を行ってきた。この中で特に腎細胞癌組織内浸潤免疫担当細胞の発現様式が腫瘍の悪性度と有意に相関し、非転移生存率や非再発率と有意に相関することを報告してきた。 また、尿路上皮癌での層別化を施行したところ、上部尿路上皮癌と膀胱癌では、その発現様式は変化がないものの、予後における重要性は異なることが示された。このなかで膀胱癌では腎細胞癌と異なり免疫担当細胞が多く浸潤している症例が予後良好群であり、癌種に応じて癌局所内への免疫担当細胞浸潤の生物学的意義が大きく異なることが示された(論文投稿中)。 これを受けて、表面分子で評価を行うだけではなく、浸潤リンパ球の機能を評価を行うこと重要であることを見出し、サイトカイン産生能・顆粒産生能・RNAシークエンスを用いた評価を行った。その結果、腎細胞癌では腫瘍の悪性度に応じてCD8の疲弊分画とされるPD-1/Tim-3の両発現分画の上昇および疲弊分画ではない細胞群の機能の低下が有意に認められた。又、制御性T細胞群の上昇およびCD4の機能低下が高悪性度腫瘍において上昇することも見出した。つまり、腎細胞癌の悪性度が、CD4/CD8の全体的な機能低下を引き起こしていることが示された(論文投稿中)。 また、腎細胞癌患者に対して抗PD-1抗体を使用した症例では高悪性度の患者群で有意に予後が不良であることから、抗PD-1抗体単剤ではなく組織内制御性T細胞を標的とした薬剤との混合治療が有望な治療法であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
腎細胞癌患者において悪性度を規定する特徴的な遺伝子変異などはTCGAのデータからも同定できておらず、多数の癌特異抗原が発現していることから候補の選定が困難であることから、in vivo研究への移行が進んではいない。
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今後の研究の推進方策 |
現在、同系マウス腫瘍モデルを作成し、in vivoによる検討を行うことを進めている。 その一方で、単一の候補遺伝子のmutationや過剰発現が見られておらず、in silicoのデータ解析をさらに行っていく必要がある。現在、癌細胞に注目し、体細胞変異の有無ならびに癌抗原の発現程度の検討から候補を絞り込んでいる。
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