研究実績の概要 |
自然発症高血圧ラット (Spontaneously hypertensive rat: SHR) の前立腺過形成に対するPDE5阻害薬タダラフィルの効果を検討した。12週齢雄性SHRにタダラフィル 2 or 10 mg/kg 及びvehicle (0.5%メチルセルロース溶液) をそれぞれ6週間連日経口投与した。 対象として、vehicle処置のWKYラットを用いた。薬物投与後、無麻酔下での血圧測定、ウレタン麻酔下での腹側前立腺血流量測定後、前立腺を摘出し、組織重量を測定した。さらに、腹側前立腺組織中のマロンジアルデヒド (MDA: 酸化ストレスマーカー) をcolorimetric assayにて、IL-6 (炎症性サイトカイン) , bFGF, TGF-beta1(細胞増殖のマーカー)をELISA法を用いて測定した。さらに、組織学的検討としてHE染色を行った。 SHR vehicle群はWKY vehicle群と比較して、前立腺重量、体重に対する前立腺重量比(PBR)及び平均血圧、腹側前立腺組織中のMDA、IL-6 , bFGF, TGF-beta1が高値を示し、腹側前立腺血流量は低値を示した。一方、タダラフィル投与群においては、vehicle投与群と比較して用量依存的にSHRにおける前立腺重量及びPBRの低下、前立腺血流量の増加、腹側前立腺組織中のMDA, IL-6, bFGF, TGF-beta1の有意な低下がみられた。さらに、タダラフィル投与によりSHR腹側前立腺上皮における細胞増殖及び形態変化の抑制効果がみられた。一方、タダラフィル投与によるSHR平均血圧には有意な影響はみられなかった。以上より、タダラフィルは前立腺血流量の増加及び前立腺組織中の酸化ストレスを抑制することで、SHRにおける前立腺過形成を抑制する可能性が考えられた。
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