筋層非浸潤性膀胱癌49症例において、経尿道的膀胱腫瘍切除術後の摘出組織をリアルタイムPCR法と免疫組織化学染色法により解析した。膀胱癌組織においてリゾフォスファチジン酸受容体1(LPA1)陽性所見を認める症例が認められた。また正常膀胱粘膜ではLPA3が陽性であった。さらに膀胱の正常粘膜においてLPA合成酵素であるAutotaxin(ATX)の発現を確認した。また、筋層非浸潤性膀胱癌症例に筋層浸潤性膀胱癌15症例も加えリアルタイムPCR法と免疫組織化学染色法にて解析を行った。筋層浸潤性膀胱癌で有意にLPA1発現が亢進していることを確認した。また、LPA2、LPA3は筋層浸潤性膀胱癌、筋層非浸潤性膀胱癌いずれにおいてもLPA1ほどの発現は認められなかった。膀胱癌細胞株T24を用いたマトリゲルインベージョンアッセイ解析によると、生理的尿中濃度のLPAによりT24の浸潤能亢進が認められた。この浸潤能の亢進はsiRNAによるLPA1のノックダウンやLPA1阻害剤であるKi16425により抑制された。LPA存在下に膀胱癌細胞株T24のラメリポディ アの形成が確認された。この形態学的変化はLPA1のノックダウンやLPA1阻害剤投与により抑制されることを確認した。膀胱癌細胞における接着能の解析のためゼラチンザイモグラフィーによるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の測定解析を行った。T24細胞株ではMMP2、MMP9ともにLPA投与による発現の亢進は認められなかった。
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