研究実績の概要 |
本研究は、ラット精巣組織を一定の間器官培養し、ex vivoで遺伝子を導入することを最終目標としている。昨年度はラット精巣へのin vivo遺伝子導入を試みた。平成30年度は精巣組織の器官培養法を確立することを主に計画し、研究をおこなった。 これまでの報告において、精巣組織の器官培養法についてはマウスを用いた研究が主であった。そこでまずはマウス精巣を用いた培養を試みた。麻酔下にマウス精巣組織片(約3mm立方)を採取し、DMEM/F10 (1:1) mediumを用いて培養し、day 0, 1, 2, 3, 5, 7日後に組織を回収し、組織を観察した。その結果、経時的に精巣組織障害が悪化し、2日目ごろに精細管組織の空胞化が最大となり、その後は精細管組織の壊死が進行することが分かった。さらに精巣組織片の間質における細胞構成の変化が明らかとなった。 同時に、精子形成の支持細胞であるセルトリ細胞またはライディッヒ細胞の細胞株(それぞれTM4細胞、TM3細胞)と精巣組織を共培養した研究も行った。この結果、ライディッヒ細胞株(TM3)が精巣組織と共培養したときに、TM3単独で培養したときと比較して、増加していることがわかった。 このようにマウス精巣組織の器官培養により、精巣組織のex vivoでの変化が明らかとなった。しかし、計画しているラット精巣の14日間の培養維持までには多くの条件の決定を要することが予想される。しかし、支持細胞と共培養により、精巣組織障害が進行するにつれて、何らかのparacrine因子により、ライディッヒ細胞の増生が観察されることが明らかとなった。
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