研究課題
本研究は、ラット精巣組織を一定の間器官培養し、ex vivoで遺伝子を導入することを最終目標としている。昨年度までに、ラット精巣へのin vivo遺伝子導入を試み、精巣組織の器官培養法を確立することを主に計画し、研究をおこなった。以前私たちのマウス精巣に対する遺伝子導入の条件をもとに、いくつかの条件を検討した結果、50μgのベクタープラスミドを精巣実質に注入、矩形波電流、100V、1Hzで18回の電気刺激により導入することが最も効率がよいと考えられた。しかし同時に、導入効率などの定量評価を行うには効率が決して満足いくものではないことも明らかとなった一方、精巣組織の期間培養を試みたところ、経時的に精巣組織障害が悪化し、2日目ごろに精細管組織の空胞化が最大となり、その後は精細管組織の壊死が進行することが分かった。さらにライディッヒ細胞株(TM3)において、精巣組織と共培養したときに、TM3単独で培養したときと比較して、細胞数が増加することがわかった。このことから、精巣における組織障害とライディッヒ細胞を始めとした間質組織の変化の重要性を見出すこととなった。そこで実際の男性不妊症の精巣生検組織の精子形成障害と間質の炎症所見に着目し、臨床検体の検討を行った。その結果、精子形成障害の進行とともに間質への炎症細胞の浸潤が生じ、精細管の径の狭小化、基底膜の肥厚が増悪することがわかった。さらにの組織変化は年齢とともに増悪することが明らかとなった。これにより男性不妊症も年齢とともに増悪する可能性がある疾患であることを、臨床検体から証明することができ、社会へ男性不妊症の早期診断・早期治療の必要性を発信するエビデンスを得られるこっとなった。これまで私たちが検討した遺伝子導入技術を応用することで、進行する精子形成障害に対する治療への応用の可能性が開けたものと考えている。
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